2025-06-04
“一通では終わらない郵便DM”が生むもの ― 段階的に伝える発想の効果
BtoB 営業・マーケティング コラム
郵便DMは、一度送って終わり――そのような捉え方が一般的かもしれません。
しかし、単発の送付だけで見込み顧客との関係を築くのは難しく、相手にとっても文脈のない一通として処理されてしまう可能性があります。
そこで本稿では、複数回にわたる郵便DMの取り組みにどのような意味があるのかをあらためて整理します。
一通ごとに完結させるのではなく、連続性を前提に設計することで、相手との接点がどのように変わっていくのか、またそれをどう進めていくべきかを考えていきます。
単発では伝わらない
郵便DMは、送付先に情報を「届ける」手段としては有効です。しかし、それが「伝わる」かどうかは別の問題です。特に初回の送付で相手に接点がなかった場合、送り手の意図や背景が十分に伝わることはほとんどありません。
一通の郵便DMで伝えられる情報量には限りがあります。仮に内容が整理されていても、相手にとっては「突然届いた紙のひとつ」に過ぎず、何の脈絡もない情報として処理される可能性があります。また、読み手がその企業に関心を持つタイミングとDMの到着が一致しているとも限りません。
もちろん、複数回郵便DMを送ることに対して「しつこく思われるのでは」と懸念を感じる方もいるでしょう。間隔や内容に配慮のないまま繰り返せば、実際に“うっとうしい”と受け取られるリスクはあります。ただし、そうしたリスクの多くは送付回数そのものに起因するというよりも、届け方の設計を工夫することで最小化できる可能性が高いという点に注目すべきです。
重要なのは、一通で完結させようとしないことです。郵便DMは、複数回にわたって届けることで初めて、“会ったことのない相手”との関係づくりに役立つ媒体になります。そのためには、ただ繰り返すのではなく、どのように段階を設けて伝えていくか――つまり、つながりを設計する視点が欠かせません。

複数回送ることで“関係”が始まる
一通の郵便DMは、受け手にとって単なる「情報のひとつ」として処理されてしまうことがあります。特に最初の接点では、企業名やメッセージの意図が印象に残らないまま終わることも少なくありません。
しかし、複数回にわたり、内容やタイミングに一定の連続性をもたせて届けることで、受け手側に「前にもこの会社から届いた」「何かテーマがつながっている気がする」といった意識が生まれます。こうした積み重ねによって、単なる通知ではなく、送り手との“関係”を意識させるような感覚を形成していくことが可能になります。
これは、単に企業やサービスの認知が進むというだけではありません。「継続的に自分に向けて情報を届けてくる存在」として認識されることで、受け手の関心や信頼が少しずつ育っていく土台となります。初回で伝えきれなかった内容も、複数回に分けて文脈を持たせながら伝えていくことで、受け手の理解は深まりやすくなります。
ここで重要なのは、回数を増やせばよいという単純な話ではないということです。内容が同じであれば繰り返しにしか見えず、かえってマイナスの印象を与えかねません。相手にとって意味がある順序と情報の変化を意図的に設計することで、連続した郵便DMが“対話のような構造”を持ち始めます。
このような工夫を前提にすれば、郵便DMは「一方的に届ける手段」から、「段階的に関係性を築いていくための起点」へと役割を変えていくことができます。そしてそれが、営業アプローチや問い合わせといった次の接点につながる可能性を高めていくのです。
郵便DMを“つながり”の起点にする設計とは
郵便DMを複数回届けることには意味がありますが、ただ回数を重ねるだけでは「連絡頻度が高い」という印象しか残らず、“関係の入口”として機能させることはできません。重要なのは、どのようにその接点を設計するかです。
まず考えるべきは、誰に対して送るのかという点です。単なる業種や役職だけでなく、「どの段階の関心を持っているか」「どのような情報を求めていそうか」といった観点で対象を捉え直すことで、DMの内容と相手の興味の一致度が高まります。無関心な相手にとっては“見流されるだけの紙”であっても、ある程度の関心が芽生えている相手に対しては、“情報が届く”だけでなく“考えるきっかけになる”可能性が出てきます。
次に、どのような順序で、何を伝えるかという構成の設計です。たとえば、1通目はごく簡潔に企業やテーマを印象づけることに集中し、2通目で具体的な事例や課題感を提示、3通目では営業やコンテンツへの導線を設ける――といったように、目的に向けて段階を設けることで、一通ごとの役割が明確になります。
さらに、郵便DMだけで完結させない設計も重要です。郵便DMを見た相手が、Webサイトでより詳しい情報に触れたり、別のチャネルでの接点(たとえばメールマガジンや営業担当との面談)に移行したりするような導線を想定しておくことで、DMはより機能的な役割を果たします。
郵便DMを「独立した紙の施策」として扱うのではなく、“つながりの入口”として機能させる前提で設計することが、全体の成果にもつながっていきます。
継続送付における実務の工夫
複数回にわたって郵便DMを届けるには、設計だけでなく、実務面での運用にも一定の工夫が求められます。意図を持って継続するためには、「どこまで送ったか」「どんな内容を送ったか」「誰に送ったか」という情報を適切に把握し、コントロールできる状態が不可欠です。
まず基本となるのは、リストの管理方法です。たとえば「1通目だけ送付済」「3通目まで完了」「反応があったため次回以降は送付停止」など、送付履歴を明確に管理できる状態を整えることが重要です。送付先が多くなるほど、この管理が曖昧になると内容の重複や漏れが発生し、相手にとって不快な体験にもつながりかねません。
次に、内容の工夫です。複数回送る際、同じ形式・語調・見た目で繰り返すだけでは、相手にとっては「また同じDMが届いた」と感じられてしまいます。一方で、メッセージに一貫性がなければ「何を伝えたいのか分からない」という印象にもつながります。重要なのは、共通の軸を保ちながら、各回ごとに焦点を変えることです。たとえば、同じ課題テーマを扱いつつ、「背景」「事例」「提案」のように切り口を変えることで、相手の関心を継続的に引き出す構成が可能になります。
さらに、送付タイミングの設計も見落とせません。月1回、隔週、3ヵ月おきなど、間隔によって受け手の印象は大きく変わります。短すぎると負担感につながり、長すぎると文脈が途切れてしまうおそれがあります。営業活動や展示会シーズンとの兼ね合いを考慮しつつ、自社にとって無理のないペースを設計することが、継続施策として定着させる鍵となります。
このように、複数回の郵便DM送付を成立させるには、設計と管理の両面を実務として担保することが欠かせません。丁寧に届ける、という地道な積み重ねが、結果的に相手との“関係づくり”を現実のものにしていきます。
まとめ ― 郵便DMは“届ける”から“育てる”へ
郵便DMを一通で完結させるのではなく、複数回にわたって届けることで“関係をつくる”という視点は、これまでの運用を見直すきっかけにもなります。
情報を「届ける」だけで終わらせず、相手の中に「企業やテーマが記憶に残る」「継続的に伝えてくる存在として認識される」状態をつくることは、営業活動の手前にある接点として大きな意味を持ちます。
ただし、繰り返し送れば成果につながるという単純な話ではありません。相手にとってストレスのない間隔や、一貫性のあるメッセージ、次のアクションにつながる構成など、“設計された連続性”があってはじめて、郵便DMはつながりを生み出す媒体として機能します。
本稿で見てきたように、複数回の郵便DM施策には、設計・管理・内容の工夫といった複数の要素が関わります。こうした要素を丁寧に扱うことで、郵便DMは単なる情報発信の手段ではなく、相手との関係性を“育てる”起点として活用することが可能になります。
一通で判断するのではなく、段階をふまえて伝えていくという発想を取り入れることで、これまでとは異なる成果や接点の生まれるきっかけとなるでしょう。
