2025-06-17

「経営課題」から始める逆算型営業戦略

BtoB 営業・マーケティング コラム

いま、多くの企業で営業のあり方が大きく見直されています。これまで主流だった「自社の商品やサービスをいかに売り込むか」という発想だけでは、顧客の信頼を得るのが難しくなってきました。経営環境が絶えず変化し、企業ごとに直面する課題が多様化している中で、営業担当者に求められるのは、顧客の経営課題そのものを深く理解し、その解決につながる提案を行う力です。

こうした背景から、「経営課題」から逆算して営業戦略を組み立てるアプローチが、改めて重要視されるようになっています。顧客の経営層がどんなテーマに悩み、どんな意思決定をしているのか。自社のサービスや製品は、そのどこに貢献できるのか。表面的なニーズや要望を超え、経営レベルの課題から遡って考えることが、営業の成果を大きく左右し始めています。

本記事では、「経営課題」を起点に据えた逆算型の営業戦略について、その考え方や進め方、実践のポイントを解説します。商品やサービスの説明にとどまらない、ひとつ上の営業活動を目指すためのヒントとしてお役立てください。

「経営課題」起点の営業戦略とは何か

営業活動の現場では、これまで「自社の強みをどう伝えるか」「製品やサービスの魅力をどう訴求するか」といったアプローチが多く取られてきました。こうした従来型の手法に加えて、営業の発想や実践の幅を広げる選択肢として「経営課題」起点の営業戦略があります。

「経営課題」起点の営業戦略とは、顧客企業がどのような目標を持ち、どのような課題に直面しているのかという視点から、営業活動全体を組み立てていく考え方です。目先のニーズや現場の要望だけでなく、経営層が重視するテーマを出発点とし、そこから逆算して自社の提案やコミュニケーションを設計します。

このアプローチには、顧客企業の経営方針や事業戦略に目を向けることで、より長期的な視野で関係を築きやすくなる、という特徴があります。また、経営課題に対して自社がどのように貢献できるかを見極めることで、新たな提案の切り口が生まれることもあります。

営業活動において、「経営課題」を起点に考えるという選択肢を持つことで、従来型の「商品をどう売るか」だけでなく、「顧客企業の課題にどう応えるか」という柔軟な発想が生まれます。営業現場での引き出しを増やすひとつの方法として、このアプローチを知っておくことには意味があるでしょう。

オンライン施策では難しい役職層にアプローチ!|ターゲットリスト総合ページ

顧客の「経営課題」をどう見立てるか

「経営課題」起点の営業戦略を考えるうえで、まず欠かせないのが、顧客企業がどのような課題や目標を抱えているのかを適切に把握することです。しかし、経営層が本音で語る課題や将来の展望が、必ずしも外部に明らかになっているとは限りません。そこで、営業担当者には「見立てる力」が求められます。

経営課題の把握には、まず公開情報の活用が基本となります。企業の公式ウェブサイトやIR情報、決算説明資料、事業報告書といった一次情報には、その企業が中長期で何を重視しているのか、どんな方向を目指しているのかが現れています。また、トップインタビューや業界専門誌の記事なども、経営層の問題意識や優先度を知るうえで参考になります。

次に、業界の動向や市場環境の変化を踏まえて、自社のおかれている立場を推測することも有効です。たとえば、規制強化や競争環境の変化、新しいビジネスモデルの登場など、外部環境の変化が経営課題にどう影響しているかを読み解くことで、顧客企業が直面するテーマをより立体的に捉えることができます。

さらに、現場の担当者との対話やヒアリングからも、多くの示唆が得られます。現場の声のなかには、経営課題に直接結びつく課題や、組織としてまだ表に出ていない潜在的なニーズが隠れていることがあります。ヒアリングを重ねるなかで、現場の課題と経営層の視点とをつなげて考えることが大切です。

これらの情報を総合的に整理し、顧客企業の「今」と「これから」を想像することで、経営課題の見立てが精度の高いものになっていきます。自社のサービスや製品が、こうした課題にどのように応えうるのかを考える前提として、まずは「顧客の経営課題を自分なりに構造化してみる」という視点を持つことが、逆算型営業の第一歩となります。

逆算型で組み立てる営業ストーリー

顧客の経営課題を見立てた後は、その課題から逆算して、どのように自社の提案を位置づけるかが重要になります。ここで意識したいのは、「どんな課題をどう解決するのか」という道筋を、顧客の視点に立って整理し、納得感のあるストーリーを組み立てることです。

まずは、経営課題の全体像を把握し、その構造を分解していきます。たとえば、大きな経営目標の背後には、複数の中間目標や具体的な障害が存在することがほとんどです。こうした構造を図式化したり、言葉で整理することで、どこに自社のソリューションが貢献できるポイントがあるのかを明確にすることができます。

次に、現状の課題や障害を具体的に把握します。公開情報やヒアリングで得た内容をもとに、顧客が抱える困難や、その背景にある要因をできるだけ客観的に描き出します。ここでは、顧客自身も気づいていない「本当の課題」や、放置されがちなボトルネックにも目を向けることが大切です。

そして、自社のサービスや製品がどのように課題解決に役立つのかを、全体のストーリーの中で位置づけます。単に「この商品が役立ちます」と伝えるのではなく、「このような経営課題があり、そこに対してこうした解決策が考えられます。自社の提案は、この一部としてこういう役割を果たせます」という流れで話すことで、提案内容がより説得力を持つようになります。

また、営業ストーリーを組み立てる際には、顧客内での合意形成や関係者の理解を意識することも大切です。経営層だけでなく、現場や他部門の担当者がどのような視点で提案を評価するかを想定し、コミュニケーションの内容や資料の構成を工夫することで、提案の受け止め方に違いが出てきます。

逆算型の営業ストーリーは、経営課題から解決策までの道筋を一貫して描くことにより、提案の納得感や現実味を高める効果があります。顧客の立場に立って考え、課題を共有しながら一緒にゴールを目指す姿勢が、こうしたストーリーを組み立てるうえでの基本となります。

「経営課題」起点で成果を高めるチームの条件

「経営課題」起点の営業アプローチを実践し、安定した成果につなげていくためには、個人の努力だけでなくチームとしての仕組みや環境が重要です。実際の商談や日常のやりとりは部門担当者を中心に進むことが一般的ですが、チーム全体でさまざまな情報や知見を持ち寄り、間接的に経営課題を読み解く力が求められます。

たとえば、現場との会話や日常のやりとりの中で得たヒントや気づきを、定期的にチーム内で共有する仕組みが役立ちます。公開情報や業界ニュース、取引先からのフィードバックといった断片的な情報も、複数の視点で集めていくことで、経営層の意図や組織全体の課題をより立体的に見立てやすくなります。

また、チームでディスカッションを行うことで、異なる案件や経験をもとに新たな視点や仮説が生まれることもあります。特定の業界や業種に関する知見を持ち寄ることで、担当者個人だけでは行き届かない情報を補い合い、提案の質や幅を広げることにつながります。

マネジメント層のサポートも、チーム全体で経営課題を考えるうえで欠かせません。短期的な成果だけでなく、中長期的な視点から課題解決を目指す活動を後押しすることで、現場の担当者も安心して挑戦できる環境が整います。定例ミーティングやナレッジ共有の場を設けるなど、日常的なコミュニケーションを充実させることも効果的です。

「経営課題」起点の営業を現場で定着させるには、こうしたチームとしての知恵や経験を活かす仕組みづくりが重要です。一人では気づけなかった視点や情報を補い合い、全体として成果を高めていく。このプロセス自体が、営業組織の成長につながるポイントと言えるでしょう。

現場でぶつかる壁と、その乗り越え方

「経営課題」起点の営業アプローチを実践する過程では、理想通りに進まない場面も少なくありません。実際の営業現場では、さまざまな壁や難しさに直面します。ここでは、代表的な課題とその乗り越え方について整理します。

まず、多くの営業担当者が直面するのは、「顧客の本当の経営課題がつかみにくい」という問題です。経営層の考えや組織全体の方向性は、外部から見てわかりやすいものではありません。こうした場合、公開情報や業界の動向を丁寧に読み解き、複数の情報源を照らし合わせて仮説を立てる姿勢が重要です。また、現場の担当者との会話から得られる断片的な情報も、チームで共有し合うことで、より精度の高い課題の見立てにつながります。

次に、営業活動の中で「関係者の全体像が見えにくい」と感じるケースも多くあります。組織が大きくなるほど意思決定に関わる人が増え、それぞれの立場や関心が異なるため、誰にどのようにアプローチすべきか悩むことが出てきます。こうした場合は、既存の接点や過去のやりとりを整理し、組織図やプロジェクト体制を自分なりにまとめてみることが有効です。加えて、チーム内で同様の経験がないか情報を持ち寄り、複数の視点で関係者を把握する工夫も効果的です。

また、「自社が提供できる価値と顧客の課題がうまく結びつかない」という壁にぶつかることもあります。このような時は、提案の切り口を一度広げ、直接的な解決策だけでなく、周辺領域やサポート領域で貢献できる点がないかを考えてみると、新たな接点が見えてくる場合があります。自社だけで対応が難しいと感じる場合でも、パートナー企業との連携や情報提供など、提案の幅を広げることで関係を築くきっかけになることもあります。

最後に、「現場の認識と経営層の認識にズレがある」と感じる場面にも注意が必要です。現場で感じている課題が、経営層の関心や意思決定ポイントと必ずしも一致しないことは珍しくありません。こうした場合は、得られる範囲で双方の考えや優先順位をすり合わせ、提案内容を微調整することが現実的です。場合によっては、現場の要望に応えつつ、経営層にも意図が伝わるような資料や説明の工夫を加えることも有効です。

現場でぶつかるさまざまな壁には、一つひとつ決まった正解があるわけではありません。しかし、課題をチームで共有し、仮説を立てて検証を重ねる姿勢が、状況を打開するきっかけになります。柔軟に発想を広げ、周囲と協力しながら進めていくことが、経営課題起点の営業アプローチを定着させるための現実的な道筋となります。

まとめ

本記事では、「経営課題」から逆算して営業戦略を組み立てるアプローチについて、その考え方や進め方、実際の現場で直面する課題などを整理してきました。

営業活動は商品やサービスをどう届けるかという視点だけでなく、顧客企業が中長期的にどのような目標や課題を持っているかを出発点にすることで、提案の質やコミュニケーションの幅が広がります。

このアプローチを活用するためには、顧客の経営課題を多面的に見立て、課題から逆算して自社の価値をどのように位置づけるかを考えることが大切です。その過程では、現場で得られる情報やチームの知見、公開されている資料など、さまざまな情報を組み合わせて仮説を立てていく姿勢が求められます。

実践のなかでは、理想通りに進まない場面や、思うように成果が見えにくい時期もありますが、チームで知見を持ち寄り、柔軟に試行錯誤を重ねていくことが定着への近道です。営業の現場において「経営課題」起点という選択肢を意識することで、従来とは異なる発想やアプローチが生まれ、提案力の向上や関係構築の新たなヒントにつながるはずです。

すべての顧客や場面に万能な手法はありませんが、営業活動の幅を広げる一つの考え方として、経営課題起点のアプローチを日々の実践の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。

他の企業リストにはない部門責任者名を掲載|ターゲットリスト総合ページ