2025-10-17

イベント後フォローを“設計”する ― 行動が成果を決めるチームのつくり方

BtoB 営業・マーケティング コラム

ウェビナーや展示会などのイベントは、営業やマーケティング活動の中で確かな接点を生み出す場です。しかし、参加者と出会った時点では関係が始まったにすぎず、その後のフォローがどのように設計されているかによって成果の行方は大きく変わります。

イベント後のフォローでは、「どのように動くか」をチームで共有しておくことが重要です。なぜなら、フォローのタイミングや手段を個々の判断に委ねると、対応のリズムや目的がずれやすく、せっかくの接点が十分に活かされないことがあるためです。つまり、「やるべきこと」だけでなく、「どう動くか」の設計を共有することが、成果を安定させる前提になるのです。

本稿では、イベント後フォローを単なる後処理ではなく、「行動の設計」を起点とする戦略的な活動として捉え直します。個々の営業担当の経験や感覚に頼るのではなく、チーム全体で再現可能な行動を組み立てる考え方について整理します。

行動設計のないフォローが生みやすい“ズレ”

イベント後のフォローは、多くの企業で定型的な流れが決められています。一定期間内にお礼メールを送り、反応を確認し、関心が高そうな相手に連絡を入れる――一見すると整っているように見えるプロセスです。しかし、この流れが成果に直結するとは限りません。

その理由の一つは、フォローが「行動としての設計」よりも「作業としての消化」に近い形で進んでしまう点にあります。たとえば、メール送信や架電の回数が目標化されている場合、担当者は“対応を終わらせる”ことに意識が向きがちです。結果として、相手の関心度や検討段階を踏まえた動き方ができず、チャンスが温存されたままになってしまうことがあります。

また、タイミングのずれも大きな要因です。イベント直後は情報を思い出しやすく、比較的反応を得やすい時期ですが、数日を過ぎるとその効果は急速に薄れます。フォローの順番やスピードが担当者ごとに異なると、関心が高いうちに接点を持てないケースが発生します。つまり、同じ“やり方”を共有していても、“動くタイミング”がばらつくと成果は安定しません。

もう一つの課題は、フォローの目的が人によって異なりやすいことです。ある担当者は「商談につなげること」を目的にし、別の担当者は「情報を伝えること」に重きを置く。どちらも間違いではありませんが、目的の基準が統一されていないと、フォロー全体が点として散らばり、チームとしての成果が見えにくくなります。

こうした“ズレ”は、個人の努力不足ではなく、行動を設計として定義しないことによって生じる構造的な問題です。行動設計が共有されていないと、同じ方向を向いて動いているつもりでも、結果として顧客との接点の質やリズムに差が生まれます。その差が積み重なることで、フォローの効率だけでなく、成果そのものにも開きが出てしまうのです。

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行動設計という考え方

イベント後フォローを成果につなげるためには、行動を「その場の判断」に委ねず、あらかじめ設計しておくことが欠かせません。ここでいう行動設計とは、「誰が」「どのタイミングで」「どの手段を使うか」をあらかじめ定義し、チーム全体で共有しておくことを指します。

行動設計の目的は、個々の担当者の経験や感覚を否定することではありません。むしろ、その経験を再現可能な形に整理し、他のメンバーも同じ品質で動けるようにするための枠組みです。フォロー活動は、担当者の力量に左右されやすい領域ですが、あらかじめ行動パターンを定義しておけば、どの担当者が対応しても一定の成果を出しやすくなります。

たとえば、イベント直後には「興味を持った相手にすぐ反応する段階」、数日後には「検討に移る静観期」、その後は「意思決定前に再接点を持つ段階」といったように、期間ごとに目的と手段を整理しておく。このように行動を時間軸で設計することで、対応の順序や温度感に一貫性が生まれます。

また、行動設計の利点は「優先順位を明確にできる」ことにもあります。イベント参加者全員に同じアプローチを取るのではなく、反応度や属性ごとに次の行動を分けておくことで、チーム全体のリソースを最適化できます。結果として、フォローのスピードと精度の両方を維持しやすくなります。

重要なのは、行動設計を単なる手順書として扱わないことです。それは「判断の先回り」をするための仕組みであり、誰が動いても“同じ方向を向くための設計”です。この考え方を導入することで、イベント後のフォローは「担当者の感覚に頼る活動」から「チームとしての戦略行動」へと変わっていきます。

成果を生むのは「情報」より「動かし方」

イベント後のフォローでは、参加者のデータや行動履歴、アンケート結果など、多くの情報が手元に残ります。

それらを整理し、誰がどんな関心を持っていたのかを把握することは大切です。しかし、情報を整理しただけでは成果にはつながりません。成果を生むのは、その情報をどう動かすか――つまり、行動にどう転換するかにあります。

情報を中心に置く発想では、分析や管理が目的化しやすくなります。「データがあるから安心」「整理できたから次に使える」という段階で止まってしまうと、実際の顧客接点が生まれません。一方で、行動設計の視点から見れば、情報は“動きを導くための材料”にすぎません。どの情報を使い、どの順番でアプローチするのか――その設計が明確であるほど、情報は価値を発揮します。

たとえば、イベント直後に反応を示した相手には即時のフォローが有効ですが、数週間後に資料を再ダウンロードした相手には別の角度からの接点が必要になります。このように、情報を「並べて見る」だけでなく、「動かす前提で見る」ことが、成果を左右します。行動を設計しておけば、どの情報が次の一手につながるかをチーム全体で判断できるようになります。

また、情報の動かし方を定義しておくことで、現場での判断基準が統一されます。「どの段階でどんな行動を取るか」を共通化しておけば、担当者ごとの対応のばらつきを防ぎ、組織としての一貫性を保てます。こうした統一された行動の積み重ねが、結果的にチームのフォロー品質を底上げしていくのです。

つまり、情報の精度や量よりも、その情報をどう“動線化”するかが成果を決定づけます。行動設計とは、情報を動かすための構造づくりであり、データを「動きに変える」ための仕組みそのものです。フォローをデータ活用の延長ではなく、行動設計の成果として捉えることで、イベント後の活動はより戦略的なものになります。

チームで行動設計を機能させるために

行動設計の効果を最大限に発揮するには、それをチーム全体で共有し、同じ基準で運用できる状態をつくることが欠かせません。行動の設計が個人に閉じていると、成果は一時的なものにとどまりやすく、組織全体の再現性につながりません。

まず重要なのは、行動設計を「個人のToDo」ではなく「チームの仕組み」として扱うことです。たとえば、フォローの目的を「反応を得ること」ではなく「次の接点を設計すること」と定義しておけば、担当者が変わっても行動の質を維持できます。このときのポイントは、行動の目的を具体的に言語化しておくことです。目的が共有されていれば、各自の判断に幅があっても方向性がぶれることはありません。

次に、部門をまたいだ共有が重要になります。営業・マーケティング・インサイドセールスといった複数の役割が関わる場合、行動設計を共通の“設計図”として扱うことで、組織全体の動線をそろえることができます。「誰がどの段階でバトンを受け取るのか」「どの情報をもとに行動を切り替えるのか」といったルールを明確にしておくと、部門間の連携がスムーズになります。

また、設計は一度決めたら終わりではなく、実際の反応を見ながら更新していくことも大切です。行動を定義することが目的ではなく、定義した行動が成果につながるかどうかを検証することが本質だからです。ただし、その検証も属人的な判断ではなく、チーム全体で共有できる形で行うことが理想です。たとえば「反応が得られたタイミング」や「次の接点までの間隔」といった指標を共通で見れば、改善が対話的に進められます。

行動設計を共有することのもう一つの利点は、チーム全体の思考負荷を下げられる点です。何を、いつ、どう動くかを設計として明文化しておけば、担当者は判断よりも実行に集中できます。これにより、フォロー活動が属人的な判断の集まりではなく、組織として整ったプロセスへと変わっていきます。

行動設計は単なるマニュアルではなく、チームの思考と判断を支える共通言語です。それが機能するとき、イベント後のフォローは「誰が動いても質が保たれる活動」へと進化します。属人化しやすいフォロー領域だからこそ、チーム全体で同じ設計思想を持つことが、成果の安定を支える鍵になるのです。

まとめ

イベント後のフォローは、担当者の熱意やスピードだけでなく、チーム全体の「動き方の設計」によって成果が左右されます。行動をその場の判断に任せるのではなく、あらかじめ定義しておくことで、対応の一貫性が生まれ、機会損失を防ぐことができます。

行動設計の考え方は、情報を活用するための仕組みであり、経験を再現可能なかたちに変える枠組みでもあります。フォローの目的や優先順位を共有しておくことで、誰が動いても同じ基準で判断できるようになり、チーム全体で成果を積み上げやすくなります。

イベント後の活動を「後処理」としてではなく、「次の接点を設計するプロセス」として捉えること。それが、営業活動を単発の対応から継続的な対話へと変える第一歩です。行動設計を軸に据えたチームは、イベントを一度きりの機会で終わらせず、関係づくりの起点として活かすことができます。

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