2025-06-25

“場”づくりで始める新規開拓 ― イベント起点の営業・マーケティング

BtoB 営業・マーケティング コラム

新規開拓の手法が多様化し、営業やマーケティングにとって「出会いのきっかけ」をいかに生み出すかが、これまで以上に重要になっています。SNSやWeb広告、インバウンド施策など情報発信の選択肢が増える中でも、いまなお多くの企業が“イベント”というリアル・オンラインの“場”を活用し続けているのはなぜでしょうか。

展示会やセミナー、ウェビナーといったイベントは、単なる集客の手段にとどまらず、「自社とまだつながりのない相手」と出会うための貴重なきっかけを設計できる場です。しかし一方で、イベントの成果が思うように出ない、開催自体が目的化してしまう、といった課題も少なくありません。

本記事では、「イベントを起点にするとは何か」を出発点に、リアル・オンライン双方の“場”を新規開拓にどう生かしていくか、その考え方と実践のヒントを整理します。単なるイベント開催にとどまらない、“場”の可能性を見直す視点を共有したいと思います。

イベントを起点にするとは何か

新規開拓の現場でイベントを活用する――この発想自体は、決して目新しいものではありません。多くの企業が展示会やセミナー、説明会、あるいはオンラインのウェビナーなど、さまざまな“場”を用意し、新たな出会いのチャンスをつくり出してきました。いわば、イベントは昔から営業・マーケティング活動の「定番」といえる存在です。

しかし、日々の業務の中で「イベントを開催する」こと自体が目的化してしまい、本来目指していたはずの新規開拓や関係構築につながりにくくなっている――そんな悩みを持つ企業が少なくありません。たとえば、イベントが終わった後の参加者との関係が一度きりになってしまう、もしくは集めた名刺やリストが十分に活用されず、そのまま放置されてしまうといったケースです。

ここであらためて考えたいのは、「イベントを起点にする」とはどういうことか、という点です。単に集客を増やすための手段としてイベントを位置付けるのではなく、“新たな接点やきっかけを、意図的に生み出すためのスタート地点”としてイベントを活用する――この視点の違いが、結果に大きな差を生みます。

たとえば、ターゲットとする層に合わせてイベントのテーマや内容を設計し、当日の運営だけでなく事前のアプローチや事後のフォローまでを一連の流れとして考えることで、「単発のイベント」ではなく「継続的な新規開拓活動」の“起点”にすることができます。つまり、イベントは“場”そのもの以上に、そこから始まる一連のコミュニケーションや関係構築の起爆剤と捉えるべきだと言えます。

このように考えることで、「イベントをやること」が目的になるのではなく、「イベントで得た出会いや情報を、どのように次のアクションにつなげていくか」という視点が生まれます。実際の新規開拓の現場では、イベント開催後のフォローやアプローチが成果を左右する場面も多く、単に人を集めるだけでは十分ではありません。

新しい出会いや商談のきっかけは、偶然に任せるものではなく、自らの手で設計し、つくり出していくものです。イベントを「起点」として捉えることで、その後のコミュニケーションや関係づくりに向けた第一歩を、より確かなものにしていく視点が求められています。

オンライン施策では難しい役職層にアプローチ!|ターゲットリスト総合ページ

“場”をどう設計し、活かすか

イベントは新たな出会いや情報発信の場であると同時に、その設計のあり方次第で成果に大きな違いが生まれます。ただ何となくイベントを開催するだけでは、思うような成果にはつながりません。むしろ、「どんな相手に、どのような価値や体験を提供するか」という設計の段階が、その後の新規開拓活動に大きな影響を及ぼします。

まず大切なのは、「誰に向けたイベントなのか」というターゲットの明確化です。広く集客することが目的ではなく、接点を持ちたい層や組織に焦点をあてて設計することで、参加者との関係構築が現実的なものになります。例えば、対象リストの段階から「自社にとって本当に出会いたい相手は誰か」を考え、その層に響くテーマやコンテンツを用意することが重要です。

また、イベント自体を「点」として考えるのではなく、事前・当日・事後までをひとつの流れとして捉える視点も欠かせません。たとえば、開催前から参加予定者に対し案内や関心を高める工夫をしたり、当日のコミュニケーション設計を工夫したりすることで、参加者との距離を縮めやすくなります。当日は一方通行の情報提供だけでなく、質疑応答や対話の機会を設けることで、相手の興味や関心を把握しやすくなります。

さらに、イベント後のフォローアップがそのまま次のアクションにつながるかどうかは、事前の設計に大きく左右されます。イベントの目的や伝えたいことが参加者にしっかり伝わっているか、連絡先やアンケートなど情報をどのように集めるかといった運用面も重要です。

こうした「場」の設計では、自社がどのような出会いを求めているのか、どのような関係を築きたいのかという視点を持ち、単なる集客や開催自体がゴールにならないようにすることが欠かせません。漠然とした目標ではなく、明確なゴールを設定し、その実現のために“場”をデザインする――こうした発想が、イベントを本当の意味で新規開拓の起点に変えていきます。

リアルとオンライン、“場”の使い分けと組み合わせ

イベントといっても、その形式や開催方法は多様化しています。リアルの会場で顔を合わせる展示会やセミナーもあれば、オンライン上で気軽に参加できるウェビナーやバーチャルイベントも一般的になりました。新規開拓の観点からは、こうした「リアル」と「オンライン」それぞれの特性を理解し、場面ごとに使い分けたり、組み合わせたりする工夫がより重要になっています。

リアルイベントには、やはり“その場でしか味わえない”体験や臨場感、偶発的な出会いがあります。参加者同士が直接顔を合わせて言葉を交わすことで、その場の空気感や熱意が伝わりやすく、信頼関係のきっかけが生まれやすいという利点があります。また、細かなニュアンスや相手の反応を直接感じ取れることも、リアルならではの強みです。

一方で、オンラインイベントは物理的な制約がないため、遠方の参加者や忙しい層にもアプローチしやすくなります。短時間でも参加できる気軽さや、記録・共有が容易な点など、リアルイベントにはないメリットがあります。参加のハードルが低い分、初めて接点を持つ層にもリーチしやすいことから、新規開拓の「きっかけ作り」として有効に働く場面も多いです。

ここで意識したいのは、リアルとオンラインを「どちらか一方」だけで考えるのではなく、目的や相手に応じて柔軟に組み合わせる発想です。たとえば、最初の接点づくりとしてオンラインイベントを活用し、興味を持った方に対してリアルの場で個別に会うという流れを設計することもできます。逆に、リアルイベントで関係が生まれた後に、オンラインで定期的なフォローアップや追加情報の提供を行うことで、関係性を継続・深化させていくことも可能です。

また、ハイブリッド型と呼ばれる、リアルとオンラインの両方を同時に活用するスタイルも普及しています。会場での参加と、遠隔でのオンライン参加を選べるようにすることで、多様なニーズに応えるだけでなく、それぞれの特徴を補い合いながら新規開拓の幅を広げていくことができます。

大切なのは、「自社がどんな相手と、どのような関係を築きたいのか」によって、リアルとオンラインそれぞれの強みを見極め、最適な“場”を選ぶことです。使い分けや組み合わせの工夫が、より多様な出会いや新しいビジネスチャンスにつながっていきます。

イベント後を“新規開拓”へつなげるために

イベントは単なるゴールではなく、新たな関係や商談のスタート地点です。どれだけ多くの参加者を集めても、イベント後の対応が不十分であれば、その出会いは一度きりのものになりかねません。むしろ、イベントを“起点”とするためには、終了後のプロセスこそが新規開拓の成否を分ける重要なポイントとなります。

まず意識したいのは、参加者の情報をきちんと整理・管理し、次のアクションにつなげることです。名刺や申込情報をそのまま放置するのではなく、参加者ごとに興味や関心、イベント当日のやりとりの内容などを記録し、後からでもすぐにアプローチできる状態にしておくことが基本です。これにより、単なる名簿の山ではなく、自社にとって意味のある“リスト”を育てていくことができます。

次に、イベント後のフォローアップが新規開拓の要になります。例えば、イベント当日に話題になったテーマや、参加者から寄せられた質問への追加情報を送る、アンケート結果をもとにニーズに合わせた提案を行うなど、参加者ごとの関心に合わせて個別にアプローチすることが、関係の深化につながります。一斉送信のメールだけで終わらせず、相手に合わせた情報提供やコミュニケーションを心がけることで、「ただ会っただけ」で終わらない関係を築くことができます。

また、イベントで得たつながりを社内で共有し、チームとして活用する視点も大切です。営業担当同士で情報を持ち寄ることで、新たな視点やアプローチのヒントが生まれやすくなります。個々の担当者任せにせず、組織的にフォローアップを仕組み化することで、せっかく得た出会いを確実に“新規開拓”につなげていくことが可能になります。

イベントは、「その日だけ」のものではなく、出会いから関係づくり、そして具体的な商談や提案へと広げていくプロセスの入口です。イベント後の対応を丁寧に行うことで、せっかくのきっかけをビジネスにつなげる可能性が大きく広がります。

まとめ

新規開拓において、イベントをどのように位置付け、どのように活用するか――この視点ひとつで、出会いの質も、その後の展開も大きく変わります。展示会やセミナー、ウェビナーといった“場”は、単なる集客や情報提供の手段ではなく、自社とまだ接点のない相手とつながるための「起点」として捉えることが重要です。

大切なのは、イベントの設計から実施、そして終了後のフォローアップまでを一貫した流れとして考え、単発の施策に終わらせないことです。リアルとオンライン、それぞれの特性を活かしながら、どのような相手とどのような関係を築きたいのかを明確にし、自社に合った“場”を選び、運用していく発想が求められています。

イベントを「きっかけづくりの場」として積極的に活用し、その後の関係づくりや提案活動へとつなげていく。こうした取り組みを地道に重ねていくことが、新しい出会いやビジネスチャンスを広げていく土台となります。

新規開拓の方法が多様化するなかで、改めて“場”の設計や活かし方を見直すことは、自社にとって新たな一歩を踏み出す大きな力になります。今後の営業やマーケティング活動においても、「イベントを起点にする」という視点を、ぜひ意識してみてはいかがでしょうか。

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