2022-07-26

BtoBでカスタマージャーニーの設定が必要な理由と作り方の基本を分かりやすく解説

BtoB 営業・マーケティング コラム

BtoBにおいても、ペルソナの設定と、その購買行動を追跡するカスタマージャーニーの想定は、マーケティングの定跡とされています。しかし、その一方で、BtoBではペルソナやカスタマージャーニーの設定は「労多くして実りが少ない」とする意見も散見されます。

「苦労してペルソナを設定してカスタマージャーニーマップを作ってみたが、あまり役に立っていない」と感じているマーケターや営業担当者は、むしろ多数派かもしれません。

しかし、Webを主なファーストコンタクトとする現代のマーケティングは、一言でいうとコンテンツマーケティングです。ターゲットに響く有効なコンテンツを作るためには、ペルソナとそのカスタマージャーニーという視点を無視することはできません。

この記事は、カスタマージャーニーやカスタマージャーニーマップの有効性を前提にして、その意義や作成手順を教科書的に説明するのではなく、効果に対する疑問も視野に入れつつ「BtoBではカスタマージャーニーをどう考え、どう設定したらよいのか」について解説します。

カスタマージャーニーとは?

顧客が製品・サービスと出会い、そこから購入・契約に至るまでのプロセスを「旅」に見立て追跡し、解析するのがカスタマージャーニーです。

カスタマージャーニーを1枚の図に「可視化」したのが、いわゆる「カスタマージャーニーマップ」です。しかし、カスタマージャーニーを想定する上で「マップ」が必須なわけではありません。マップはあくまで旅の概要にすぎません。

ペルソナとカスタマージャーニー

カスタマージャーニーを想定する際には、旅の主人公である顧客が購入までのプロセスで、何を考え、どう行動するかを予測するために「ペルソナの設定」が必要です。

ペルソナは「仮想された顧客代表」で、実在する人物であるかのように、その人物像を価値観や行動パターンが見えてくるまで作り込みます。

BtoBでは、法人と意思決定者(バイヤー)、製品の使用者など、複数のペルソナ設定が必要になります。バイヤーや使用者は、法人のペルソナ(組織風土)に影響されながら、個人のペルソナを形成しています。

BtoBのペルソナ設定については、次の記事をご参照ください。

BtoBマーケティングでのペルソナの必要性と、現場で使える設定方法

BtoBのカスタマージャーニー

BtoCのカスタマーは気の向くままに「買物の旅」をして、買物によって生活を豊かにしようと考えます。しかし、BtoBのカスタマーは必要なときにしか旅に出ません。企業がふだん考えるのは「売ること」であり「買物によって自社を豊かにする」ことではありません。企業は売るために必要なものしか買わないのです。

したがって、BtoBのカスタマージャーニーを想定する目的は「解決すべき課題が生じたときの企業の買物の仕方を探る」ことです。

また、BtoBはつねに何らかの課題を抱えていることも事実です。それが目の前にぶら下がっている課題ならすぐに動き出しますが、潜在的に課題を抱えてはいるがまだ意識の表面に現れていない場合もあります。

したがって、BtoBのカスタマージャーニーでは、潜在する課題に気づかせる最初のタッチポイントの想定や、そこでアピールするコンテンツの作成が、見込み客を増やすために重要です。顧客(見込み客)に課題が生じたときに、いかに自社を思い出してもらえるかが勝負になります。

先方からのコンタクトがあったときは、すでに競合企業とのマッチレースが始まっていると考えなければなりません。「早い者勝ち」とは限りませんが、出遅れが致命傷になるケースは少なくありません。

BtoBでカスタマージャーニーの設定が必要な理由

複数の人が関与し、購買決定までに時間がかかるBtoBでは、そのプロセスの分析と適切な対応が業績を左右します。

また、BtoBのビジネスチャンスは、顧客の「課題の出現」によって突然現れ、課題が解決すれば閉じられてしまいます。購入プロセスは長いが、チャンスの扉が開かれている時間は短いのです。

チャンスを逃さない迅速で適切な対応をするためにカスタマージャーニーが必要だとされるのは、次のような理由からです。

Webの発達とリード育成プロセスの多様化

Webを最初のタッチポイントとする顧客が増えて、リード(見込み客)の獲得経路が多様化しています。

Webサイトやメールマガジンなどオンラインでのリード獲得の比重が増す中で、展示会、セミナー、セグメントされた名簿によるDMなどオフラインでのリード獲得の重要性も低下したわけではありません。

リードの獲得経路が多様化するに従って、リード育成の道筋も多様化しています。これは、視点を変えると、顧客の購入プロセスも多様化していることを意味します。

多様な経路から獲得したリードを、オンライン経由はマーケティング部が管理して、オフライン経由は営業部が管理するという対応では、戦略的なリード育成はできません。カスタマージャーニーという視点で、各部署が見通せる総合的なリード育成をすることが必要です。

マーケティングサービス、分析ツールの充実

さまざまな経路から獲得したリードを有効活用しようとすると、それを整理し、育成プロセスの中に適切に位置づけるために、コンピュータによるデータのクロス処理が必須です。これは、従来はITスキルのあるマーケティング専門家でなければできないことでした。

しかし、近年は、使いやすいMA(マーケティングオートメーション)ツールなど、マーケティングサービスや分析ツールが充実し、専門的なマーケティングスタッフがいない中小企業でも利用可能になりました。それを上手に利用する企業が競争優位に立つ時代になったのです。

この「上手な利用」のために、関係部署間で共有できるリード育成の見取り図として、カスタマージャーニーが必要になります。

カスタマージャーニーを想定するメリット

カスタマージャーニーの想定は決して楽な作業ではありませんが、それをすることによって下記のようなメリットがあります。

自社の顧客となり得る企業に対する理解が深まる

カスタマージャーニーを作ることで、顧客と商品のタッチポイントや購買までの道のり、関係者の思考・感情をより深く理解できます。

ただし、カスタマージャーニーを作ったからと言って、ただちに旅のシナリオ通りに成約件数が伸びるわけでもなく、育成の途中で「必要ない」と言われる確率が減るわけでもありません。

ハッピーエンドを前提にしたカスタマージャーニーは、その反動として「カスタマージャーニーなんて役に立たない」という無力感を生みがちです。

しかし、BtoBのビジネスチャンスの扉は突然開かれて、突如閉じられること、旅のプロセスで「必要ない」の反応も多いことを前提にしてカスタマージャーニーを作るのは、顧客の理解、自社の強みと弱みの理解に必ず役立ちます。

顧客の課題を探知して、焦点のあったアプローチが可能になる

BtoBの特性を理解して、自社の強みと弱みをふまえたカスタマージャーニーを作ることで、顧客の反応から顧客が抱える課題を探知するセンサーやノウハウを磨くことが可能です。

顧客の課題を探知できれば、提供すべき情報、コンテンツの焦点をより絞り込むことができます。顧客視点で自社の商品・サービスの強みをアピールし、各プロセスで顧客のニーズに合ったアプローチができるのです。

マーケティング部門と営業部門が共通認識を持てる

カスタマージャーニーを作ることで確実に得られるメリットは、マーケティング部門と営業部門が共通認識を持てること、それによって協力体制が強化されることです。

カスタマージャーニーはリードナーチャリング(見込み客育成)のシナリオです。シナリオ作りには、必ず関係部署を横断するプロジェクトを組んで、共同で作業しなければなりません。そのプロセスで、人によって、部署によって顧客理解や自社製品・サービスのセールスポイントについての理解に違いがないかが洗い出されます。

後述するように、カスタマージャーニーの作成には既存顧客へのインタビューが必要なので、そこで得られた自社の強みや弱みに対する知見を、異なる部署間で共有することもできます。

BtoBのカスタマージャーニー作成のポイント

実り多いカスタマージャーニーを作成するために留意すべきポイントを解説します。

カスタマージャーニーの作成手順は、一般的に次のように説明されています。

  1. 旅の主人公となる見込み客のペルソナを設定する
  2. ペルソナとのタッチポイントを洗い出し、旅の行程を整理する
  3. タッチポイントで必要なコンテンツを洗い出す
  4. 流れの中でのペルソナの気持ち(思考、抱える課題、感情)を洗い出す
  5. 流れに沿ってタッチポイントでのアピール施策を考える

しかし、BtoBのカスタマージャーニーでは、まずペルソナの設定が難しいなど、注意すべきポイントがいくつかあります。

既存の優良顧客のカスタマージャーニーをモデルにする

BtoBでは最初のペルソナの設定でつまづくケースが多く見られます。それは、購入プロセスで、製品の使用者、使用者の上司、経営者など、複数のキーパーソンが登場するからです。

上記三者の関係性も企業によってさまざまな上に、「旅」の最初のタッチポイントに現れるキーパーソンが製品の使用者とは限りません。企業が抱える課題の緊急性によっては、経営者自身が旅の主人公になるケースもあります。

このように複雑なBtoBのペルソナの現実的な設定法は、既存の優良顧客をモデルにすることです。優良顧客とは、自社の強みが顧客の課題解決に役立っていて、いい関係を継続している顧客です。顧客から見たら、課題を解決してくれるずっと付き合いたい取引先です。

双方にとって良い関係が築けている何社かの顧客に注目して、そこから関係者のペルソナやタッチポイントが生まれた状況などを抽出していきます。具体的には、下記の「アカウントセールスの手法の応用」が有効です。

アカウントセールスの手法をカスタマージャーニー(見込み客の育成)に応用する

アカウントセールスとは、既存顧客から主要なアカウント(企業)を選択し、その企業が抱える課題のソリューションを提案することで、良い関係を築いていく営業手法です。

多くの競合企業がひしめく成熟化した市場では、既存の顧客から特定の企業をターゲットして、その企業が抱える問題点や潜在的なニーズに対して、最適なソリューションを波状的に提案して関係性を強化していくアカウントセールスが有効です。

アカウントセールスについては次の記事をご参照ください

アカウントセールスとは? 中長期的な関係性を築く営業施策について解説

アカウントセールの考え方は、カスタマージャーニー(見込み客の育成)にも応用可能です。アカウント(企業)とどんなコンタクトポイントで出会い、どう攻略したか(どう提案したか)を想起してカスタマージャーニーを設計することで、これから出会う顧客との実り多い旅のシナリオを作ることができます。

「反応なし」「必要なし」を想定したカスタマージャーニーに

リード育成といっても、リードのすべてが育っていくわけではありません。タッチポイントで提供するコンテンツや働きかけに無反応のリードも、「いまのところ必要ない」と断るリードも当然あります。というより、それが大多数のはずです。

したがって、実際に役立つカスタマージャーニーを作るためには、「無反応」や「必要なし」のリアクションをどうあつかうかという視点が必要です。リードが好反応を示すハッピーエンドのシナリオだけでは、結局「作ってみたけど役に立たない」ということになりがちです。

他部署と連携し複数人で作成する

1人で作る、あるいは1部署で作るカスタマージャーニーは、けっして機能しません。それでは、カスタマージャーニーを作ることで確実に得られる「共通認識」や「協力姿勢」が生まれないからです。

少なくともマーケティング部と営業部とプロジェクトチームを組んで、共同でカスタマージャーニーを作成することが必要です。

時間をかけすぎずに作成して、改善をくり返す

カスタマージャーニーの作成に時間をかけすぎずに、使用する中で詳細を追加し、改善していくことが大切です。

BtoBのカスタマージャーニーはペルソナもプロセスも複雑なので、最初から完璧を目指すと、挫折して放置する結果になりがちです。

まとめ

BtoBのカスタマージャーニー作りは、ツールを使って要領よく1枚のマップに仕上げることではありません。いわゆる「可視化された顧客の旅」では、BtoB企業の複雑な購買プロセスを充分に捉えることはできないのです。

大切なのは、現実にある複雑さを切り捨てて可視化することではなく、複雑さを少しでも解析して、ビジネスチャンスを逃さない仕組みづくりをするために役立つカスタマージャーニーを作ることです。

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