2025-05-27

部門ごとに変えるべきセミナー告知の打ち出し方

BtoB 営業・マーケティング コラム

セミナーを企画しても、呼びたかった相手からは申し込みが来ない。とくに“営業部長に来てほしかったのに、なぜか現場のマーケ担当ばかりが集まってしまう”という経験は、多くの現場に共通しています。その背景には、案内文の打ち出し方が関係していることが少なくありません。部門ごとに違う関心の持ち方や情報の受け取り方に目を向けると、同じセミナーでも伝え方を変える必要がある場面が見えてきます。本記事では、「誰に来てほしいか」を前提に、セミナー案内をどう設計すべきかを考えていきます。

同じ案内では、部門をまたいで人はさほど動かない

セミナーの案内を全社向けに一斉配信し、幅広く反応を得ようとする方法は、多くの現場で採用されています。工数を抑えながら多くの対象に情報を届けられるという点では理にかなっていますが、実際には「来てほしい人が来ない」状態に陥りやすいのも事実です。

とくに課題となるのが、異なる部門をまたいだ案内の場合です。たとえば「営業部長に参加してもらいたい」と考えていたにもかかわらず、蓋を開けてみれば参加者の多くがマーケティング部門や現場のスタッフだったというケースは少なくありません。同じテーマ、同じ言葉で構成された案内文では、どの立場の人にとっても“自分ごと”に感じられないまま、反応が薄れてしまう傾向があります。

もちろん、テーマによっては部門を問わず関心を引けるものもありますし、文面がシンプルでも伝わる場合もあります。ただし、それは例外的な成功として扱うべきで、基本的には「誰にとっての価値か」が案内文の中で明確に伝わらないかぎり、関心のあるはずの人にも届かない、ということが起きやすくなります。

案内を一通送れば、部門を越えて幅広く動いてくれる――そうした前提で設計された施策が、なぜ思うように機能しないのか。その出発点にこそ、“打ち出し方”の再考が必要になるのです。

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営業とマーケの“アンテナ”は違う

ひとくちに「関心があるテーマ」と言っても、それがどのように受け取られるかは、役割や立場によってまったく異なります。たとえば「営業活動の生産性を高める」というテーマは、営業部長にとっては“数字を伸ばす施策”として捉えられる一方で、マーケティング部門の担当者には“案件の質や見込み客の育成プロセス”として響くかもしれません。

これはどちらが正しいという話ではなく、日々見ている業務の指標や、持っている責任の軸が異なることに由来します。営業部長は、月次や四半期での着地に目を配りながら、現場をどう動かすかに意識が向きやすい。一方のマーケ部員は、キャンペーンや施策の改善点、コンテンツの反応といった“動かす前の手触り”を日々見ています。

こうした背景があるため、セミナーの案内文に書かれた言葉が“響くかどうか”は、どの役職に向けて発信されているかで大きく変わってきます。たとえ同じ文面を読んだとしても、ある人にとっては目を留めるフレーズになり、別の人にとっては通り過ぎるだけの情報になってしまうこともあるのです。

だからこそ、もし「営業部長に届けたい」のであれば、彼らが普段何に注意を払い、どんなキーワードで物事を整理しているのかを想像するところから設計を始める必要があります。それを無視して、あらゆる部門に同じ語りかけをしても、アンテナの感度がずれている限り、届く情報にはなりづらいのです。

「誰に来てほしいか」に応じて、案内を打ち分ける

セミナーの案内文というと、「1つの文面を全員に送る」のが当たり前のように感じられるかもしれません。しかし実際には、誰に来てほしいかによって文面を変えることは、ごく自然な判断です。むしろ、伝える相手の関心や立場を踏まえない案内文では、そもそも見てもらえない、読んでもらえないという事態にもつながります。

たとえば営業部長に対しては、「現場の行動を変えるための打ち手」「受注率の向上に直結する話」といった打ち出しが響きやすくなります。一方で、マーケティング部の担当者に向けては、「リード獲得後の育成プロセス」や「コンテンツの反応分析」といった視点のほうが手応えを感じてもらいやすいでしょう。同じセミナーでも、関心の持ち方が違えば、届く言葉も違って当然です。

このような違いを踏まえれば、「案内文を複数パターン用意する」のは、決して手間のかかる過剰対応ではなく、妥当な工夫の一つといえます。件名を変える、冒頭の一文を変える、例示する課題を変える――こうした細かな調整だけでも、反応の出方がまるで違うことがあります。

さらに言えば、メールの送信タイミングや、差出人名の工夫も効果を左右する要素です。営業部長には部門長名義で、マーケティング担当には実務担当者名義で送るなど、相手にとって“誰から来たのか”が印象に影響するケースもあります。

案内は一斉に出すもの、という思い込みを捨てるだけで、狙った相手からの反応率が変わることは十分にあり得ます。「来てほしい人に合わせて設計する」という視点があれば、案内はもっと戦略的に扱えるようになるのです。

案内文の肝は「テーマ」よりも「気づきの一文」

セミナー案内をつくるとき、つい意識が向いてしまうのが「テーマ」の言い回しです。タイトルのインパクトを強くしようと、目を引く単語を選んだり、抽象度を上げて広く興味を持ってもらおうとしたりする工夫もよく見られます。しかし、タイトルやテーマだけでは“自分に関係がある話かどうか”は伝わりにくく、反応につながらないケースも少なくありません。

むしろ重要なのは、その案内文の中に「自分の課題と重なる」と感じさせる一文があるかどうかです。たとえば、「今期の案件は順調でも、来期が見えていない」「営業現場の温度感が共有されず、戦略が浮いている」など、日常的な会話で出てきそうな具体的なフレーズがあれば、それだけで受け手の目は止まります。

役職者ほど、限られた時間の中で「今すぐ自分に関係ある情報かどうか」を瞬時に判断しています。そうした読み方においては、長いテーマ説明や抽象的なキーワードよりも、たった一文の“気づき”が参加の決め手になることが多いのです。

ここでいう“気づき”とは、読み手自身が「最近それを考えていた」「その感覚、ある」と思わず共鳴してしまうようなひとことです。これは共通の関心というよりも、“共通の違和感”に近いかもしれません。明確な課題意識がある人ほど、その違和感に反応しやすいものです。

案内文づくりの際には、「テーマをどう打ち出すか」より先に、「その一文で誰のアンテナが動くか」を考えること。セミナーの中身と同じくらい、案内文の中に埋め込む“一文の説得力”が、参加のハードルを大きく下げてくれるはずです。

送った先ではなく“届いた相手”が成果に直結する

セミナーの案内を送るとき、「何件送信したか」「どれだけ開封されたか」といった数値に目が行きがちです。もちろん、これらは施策の実行状況を把握するうえで欠かせない指標ですが、それだけでは「どんな相手に届いたのか」という本質的な手応えまでは見えてきません。

本当に確認すべきは、「誰が申し込んだか」「どういった立場の人に届いたのか」です。仮に申込数が多くなくても、営業部長や営業企画など、施策の意思決定や現場の方針に関わる役職者から反応が得られていれば、それは十分な成果と捉えられます。むしろ、そのような相手に“意図して届けられたかどうか”こそが、案内文の設計精度を示す指標になりえます。

一方で、申し込み数や開封率といった表面上の数値が高くても、反応の大半が設計段階で想定していた層とかけ離れていた場合、後のアクションにつながりにくいこともあります。ただし、だからといって、若手や担当者レベルの反応が無意味だというわけではありません。役職者からの指示で参加しているケースや、部門内で情報収集の役を担っていることもあり、将来的な接点形成としては十分に価値があります。

要は、どんな層から反応があったかを、単なるラベルではなく文脈の中で読み解く姿勢が必要なのです。「数が出た=成功」とするのではなく、「誰がどう動いたか」「狙っていた層とのズレはどこか」を丁寧に見ること。その視点を持つことで、セミナー案内はただの集客手段から、優先すべき相手と出会うための“反応検知装置”として機能するようになります。

まとめ

セミナーは、「ただ開催するだけ」で成果につながる時代ではありません。集客の成否を分けるのは、テーマそのもの以上に、「そのテーマを誰に向けて、どう伝えたか」にあります。とくに部門をまたいだ案内を出す際は、全員に同じメッセージを投げかけるのではなく、それぞれの立場に合わせて“届く表現”に調整する前提で考えることが欠かせません。

案内文を分ける、言葉を変える、件名を変える。こうした対応は一見すると手間に見えるかもしれませんが、そもそも“全員が同じように受け取る”という前提のほうが不自然です。むしろ、関心の持ち方が異なるのは当然であり、その違いを尊重した設計こそが、最終的な集客の質を左右します。

また、送った数や申込数といった目に見える数字以上に、「狙っていた相手に届いたかどうか」「想定した反応と一致していたかどうか」を検証する姿勢が重要です。誰にどんな一文が響いたのかを振り返ることで、次の案内はより高い精度で設計できるようになります。

セミナーを単なる集客施策ではなく、「関係を築きたい相手と出会う場」として設計するならば、案内の設計は一層重要になります。すべての対象に同じ案内文を送るのではなく、「この相手にはこう伝えるべき」という視点で文面を設計することが、これからの接点づくりにおいて力を持つのです。

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