2026-01-27
展示会の新規来場者集客に、なぜ郵送DMが有効なのか
BtoB 営業・マーケティング コラム
展示会は、新しい顧客との出会いをつくる場として、今も多くの企業に活用されています。しかし近年、「新規来場者が思うように集まらない」と感じている担当者は少なくありません。Web広告やメールなどデジタル施策が一般化する一方で、情報は届いても行動には結び付かない状況が生まれています。
そうした中、あらためて注目されているのが郵送DMです。本記事では、展示会の新規来場者集客という文脈において、なぜ郵送DMが有効とされるのかを、国内外の調査データや公開情報をもとに整理していきます。
目次
展示会集客における「新規来場者」の位置付け
展示会の集客では、既存の取引先や過去に接点のあった来場者と、新規の来場者が混在します。展示会という場が、情報収集や比較検討の場として機能している以上、これまで接点のなかった層が一定数含まれることは、特別なことではありません。
一方で、集客施策を具体的に考える場面では、既存接点層と新規層では前提条件が異なります。既に企業名やサービスを知っている相手に比べ、新規来場者は、展示会自体や出展企業についての事前情報をほとんど持っていない場合も多く、来場を判断するまでに必要な情報量が多くなりがちです。
近年は、展示会の案内や出展情報がWebサイト、メール、広告などを通じて広く発信されるようになりました。しかし、新規来場者にとっては、こうした情報が必ずしも行動に結び付くとは限りません。展示会の存在を知ることと、実際に会場へ足を運ぶことの間には、依然として距離があります。
この差は、展示会の内容そのものよりも、情報の届き方や受け取られ方によって生まれることが多いと考えられます。新規来場者は、日常的に多くの情報に触れており、展示会情報もその一つとして埋もれやすい状況にあります。そのため、集客手法によっては、案内が届いていても十分に認識されないまま終わってしまうケースもあります。
展示会集客において新規来場者を増やすためには、「何を伝えるか」だけでなく、「どのような手段で伝えるか」が大きな影響を持ちます。新規層に対して、展示会の存在と来場のきっかけをどのようにつくるのか。その視点から集客手法を見直すことが、現在の展示会集客では欠かせなくなっています。
新規来場者はなぜオンライン施策だけでは動きにくいのか
展示会の集客において、オンライン施策は欠かせない存在になっています。公式Webサイトでの告知、メール配信、Web広告などを通じて、展示会の情報は以前よりも広く、速く届けられるようになりました。実際、情報の到達範囲という点では、オンライン施策は大きな役割を果たしています。
しかし、新規来場者の行動という観点で見ると、オンライン施策だけでは十分に機能しにくい場面も増えています。展示会の存在を知っているにもかかわらず、来場には至らないという状況は、その典型例と言えるでしょう。
この背景には、情報環境の変化があります。新規来場者は、日常的に大量の情報に接しています。業界ニュース、広告、セミナー案内、サービス紹介などが、メールやWeb上で次々に流れてきます。その中で展示会の案内も受け取られますが、他の情報と同列に並ぶことで、特別なものとして認識されにくくなっています。
オンライン施策の多くは、画面上で短時間に消費されることを前提としています。スクロールすれば次の情報に移り、後から改めて見返されることは多くありません。新規来場者にとって、展示会は「今すぐ判断しなければならない情報」ではないため、目に入ったとしても後回しにされやすい傾向があります。
また、オンライン施策は、ある程度の関心や問題意識を持っている層には届きやすい一方で、まだ具体的な検討段階に入っていない新規層にとっては、行動のきっかけになりにくい側面もあります。展示会は時間を確保し、会場に足を運ぶ必要があるため、他の情報収集手段に比べて心理的な負担が大きくなります。そのため、案内を目にしただけでは、来場を決断するまでには至らないケースが多くなります。
さらに、オンライン施策は受け手側が情報を選別する構造になっています。興味がある情報は残り、そうでないものは流される。この選別は無意識に行われることが多く、展示会の案内も、その時点での関心度によっては簡単に見過ごされてしまいます。新規来場者ほど、展示会の価値を具体的に想像しにくいため、この選別の段階で外れてしまう可能性が高くなります。
こうした理由から、オンライン施策は「情報を届ける」ことには適していても、「新規来場者の行動を後押しする」という点では限界が見え始めています。展示会集客においては、情報量を増やすこととは別に、行動につながりやすい接点のつくり方を考える必要があります。
郵送DMが新規来場者との最初の接点に向いている理由
新規来場者との接点づくりを考える際、重要になるのは「どれだけ多くの情報を届けるか」ではなく、「どのような形で情報が認識されるか」です。展示会の案内が一度は目に触れていても、印象に残らなければ来場行動にはつながりません。この点で、郵送DMはオンライン施策とは異なる特性を持っています。
郵送DMの最大の特徴は、物理的な形で相手の手元に届くことです。Web上の情報が画面をスクロールすれば消えていくのに対し、郵送DMは一度受け取ると一定時間、視界や机の上に残ります。新規来場者にとって展示会は緊急性の低い情報であることが多いため、「後で確認できる状態」で届くこと自体が、行動につながる前提条件になります。
また、郵送DMは情報の受け取られ方が比較的シンプルです。オンライン施策では、複数の情報が同時に並び、無意識のうちに取捨選択が行われます。一方、郵送DMは一通ごとに独立した情報として認識されやすく、展示会の案内そのものに意識が向きやすくなります。特に新規来場者の場合、企業名や展示会名を初めて目にするケースも多く、落ち着いて情報を確認できる点は無視できません。
展示会というイベントの性質も、郵送DMとの相性に影響しています。展示会は、日時と場所が明確に決まっており、事前に予定を確保する必要があります。そのため、「その場で即判断する情報」よりも、「一度受け取り、検討する情報」として届くほうが行動に結び付きやすくなります。郵送DMは、展示会の開催概要を一覧できる形で伝えやすく、来場の検討材料として機能しやすい手段です。
さらに、郵送DMは新規来場者との最初の接点として、過度な前提作業・知識を必要としません。オンライン施策では、リンク先を開き、追加情報を読み進めることが前提になる場合がありますが、新規層にとってはその時点で離脱が起きやすくなります。郵送DMであれば、最低限必要な情報を一枚で把握でき、展示会の全体像をつかみやすくなります。
郵送DMは、オンライン施策に比べて手間やコストがかかる側面もあります。しかし、その分、情報の到達と認識という点では、異なる価値を持っています。新規来場者に対して展示会の存在を伝え、来場を検討するきっかけをつくるという役割において、郵送DMは今も有効な手段の一つとして位置付けることができます。
展示会集客における郵送DMの役割は、他の施策を置き換えることではありません。オンライン施策では届きにくい層に対して、最初の接点をつくる手段として活用することで、その特性が生きてきます。新規来場者との関係づくりの入口として、郵送DMが果たす役割を整理することが、展示会集客を考える上で重要になっています
データと研究から見る郵送DMの有効性
郵送DMの有効性を客観的に整理するうえでは、感覚的な評価ではなく、調査データに基づいて特性を確認することが重要です。国内では、総務省の資料として公開されている「DMメディアの現状」において、郵送DMに関する複数年の調査結果が整理されています。
この資料では、本人宛てに送付された郵送DMの閲読状況が示されています。2023年調査では、本人宛DMの閲読率は75.1%とされており、過去10年にわたっておおむね7割から8割の水準で推移していることが確認できます。
また、郵送DMを受け取った後の行動についても同資料内で整理されています。2023年12月調査では、本人宛DMを受け取った人のうち19.7%が何らかの行動を起こしたとされており、その内訳として「ネットで調べた」「問い合わせた」「購入・利用した」といった行動が含まれています。これは、郵送DMが単に情報を届けるだけでなく、その後の行動判断に一定程度影響していることを示すデータと捉えられます。
さらに、資料では郵送DMの特性として、「手元にモノとして届くことによる視認性」や「自分宛であることによる One to One 性」が、デジタルメディアとの違いとして整理されています。紙のDMは、デジタル広告のように画面上で流れて消費される情報とは異なり、一定期間保管され、後から見返されやすい媒体である点が特徴として挙げられています。
展示会集客との関係で見ると、これらのデータは示唆的です。展示会の案内は、その場で即座に意思決定される情報ではなく、日程調整や業務都合を踏まえて検討されることが多くなります。そのため、情報が一度届いた後に再確認できる状態で残るかどうかは、来場判断に影響します。郵送DMの高い閲読率や行動喚起率は、こうした展示会特有の検討プロセスと相性が良い特性と考えられます。
加えて、同資料では、インターネット広告費が拡大する一方で、DM広告費は大きく落ち込まず推移してきた点にも触れられています。広告環境がデジタル中心へ移行する中でも、郵送DMが一定の役割を維持してきた背景には、こうした「届き方」や「認識され方」の違いがあると読み取ることができます。
これらの調査結果から、郵送DMは即時的な反応を狙う手法というよりも、情報を確実に認識してもらい、後日の行動判断につなげる媒体としての特性を持っていることが分かります。展示会の新規来場者集客において郵送DMが活用されてきた背景には、こうしたデータに裏付けられた特性が存在しています。
展示会集客における郵送DM活用の考え方
展示会集客において郵送DMを検討する際に重要なのは、「郵送DMを使うかどうか」ではなく、「どのような位置付けで使うか」を整理することです。郵送DMは、展示会のテーマや対象者によっては集客の中心的な役割を担うこともあり、また別のケースでは他の施策と組み合わせて活用されることもあります。
新規来場者の集客という観点で見ると、郵送DMの価値は「情報量の多さ」よりも「情報の届き方」にあります。オンライン施策が前提となった環境では、展示会の案内は認識される前に流れてしまうことも少なくありません。その点、郵送DMは物理的に手元に残り、後から見返されやすい形で情報を届けることができます。この特性は、来場判断までに一定の検討時間を要する展示会集客と相性が良いと言えます。
そのため、展示会集客における郵送DMは、即時の反応を期待する施策として扱うよりも、来場判断の前提をつくる手段として位置付けるほうが現実的です。開催概要や日程、会場といった基本情報を整理して伝え、展示会の存在を認識してもらう。この役割に絞ることで、郵送DMの特性が生きてきます。
また、郵送DMは対象者を選びやすい手段でもあります。展示会のテーマや出展内容と親和性のある業種、地域、役割などを踏まえて送付先を設計することで、不特定多数に向けた情報発信とは異なる接点をつくることができます。新規来場者向けの集客では、誰に届けるかを明確にすること自体が、施策の成否に影響します。
オンライン施策との関係も整理しておく必要があります。郵送DMはオンライン施策の代替ではなく、役割を分けて併用されることを前提とした手段です。Webサイトやメールで詳細情報を補完しつつ、郵送DMによって展示会の存在や開催概要を印象付ける。このように設計することで、各施策の特性を無理なく生かすことができます。
展示会集客の現場では、準備期間や予算、人的リソースに制約があるのが一般的です。その中で郵送DMを使うかどうかを判断する際には、「どの段階の課題に対して使うのか」を明確にすることが重要になります。新規来場者に展示会を知ってもらう段階なのか、来場検討を後押しする段階なのか。その位置付けによって、郵送DMの意味合いは大きく変わります。
郵送DMは、展示会集客において条件が合えば主力にもなり得る一方で、他の施策と組み合わせることで力を発揮する側面も持っています。デジタル施策が前提となった現在の環境だからこそ、郵送DMの特性を冷静に整理し、展示会ごとに適切な役割を与える視点が求められています。
まとめ
展示会の新規来場者集客を考える際、オンライン施策だけでは行動につながりにくい場面が増えていることは、多くの現場で実感されているところでしょう。情報が不足しているというよりも、情報が届く前提が変わったことで、認識されにくくなっているという構造的な要因が影響しています。
そのような環境の中で、郵送DMは「情報を確実に認識してもらう」という点で、今も一定の役割を持っています。総務省に掲載されている調査データからも、本人宛の郵送DMは高い閲読率を維持しており、受け取った後の行動につながる割合も一定水準にあることが示されています。これらの数値は、郵送DMが単なる旧来の手法ではなく、特性を理解したうえで使われてきた媒体であることを裏付けています。
展示会集客における郵送DMの価値は、即時の反応を大量に獲得する点にあるわけではありません。新規来場者に対して展示会の存在や開催概要を認識してもらい、来場を検討するための前提をつくる。その役割において、郵送DMはオンライン施策とは異なる強みを発揮します。物理的に手元に残り、後から見返されやすいという特性は、展示会というイベントの性質と相性が良いものです。
また、郵送DMは展示会のテーマや対象者が明確な場合には、集客の軸として機能することもあります。一方で、すべての展示会に同じ使い方が当てはまるわけではなく、オンライン施策との役割分担を前提に設計することが重要になります。郵送DMを使うかどうかではなく、どの段階の課題に対して使うのかを整理する視点が欠かせません。
展示会の新規来場者集客は、単一の施策で完結するものではありません。その中で郵送DMは、条件が合えば主力にもなり得る一方、他の施策を補完する役割としても機能します。デジタル施策が前提となった現在だからこそ、郵送DMの特性を冷静に捉え、展示会ごとに適切な位置付けを与えることが、集客を考えるうえでの一つの選択肢になります。








