2025-09-04

営業リストの分類は「分けすぎ」と「まとめすぎ」の間で考える

BtoB 営業・マーケティング コラム

営業リストは「できるだけ多く集め、一括で管理するもの」と考えられがちです。実際、部署も地域も企業規模も混在したままのリストを使い、全員に同じようなアプローチをしてしまうケースは少なくありません。しかし一見効率的に見えるその方法が、実は営業の成果を遠ざけていることがあります。

部署ごとに課題が異なり、地域ごとに商習慣が変わり、企業規模ごとに意思決定プロセスも違う。それにもかかわらず、ひとつのリストで一律に接触すれば、相手に響かない提案を繰り返すことになりかねません。逆に、リストを適切に分けて使えば、営業の力点が明確になり、担当者ごとの強みを活かすことができます。

本稿では「営業リストを分けて使うべきか」という一見単純な問いを手がかりに、部署別・地域別・企業規模別という切り口から、リスト設計の盲点を掘り下げます。日常的に見落とされがちなポイントを整理し、営業成果に直結するリスト活用の考え方を提示します。

「分ける/分けない」が成果を左右する理由

営業活動において、リストは単なる連絡先の集まりではなく、営業の動き方そのものを規定する基盤です。誰に、どのような順序で、どんな切り口で接触するかは、リストの設計次第で大きく変わります。それにもかかわらず、多くの現場では「集めた顧客情報はひとまとめにして管理する」という運用が一般的です。確かに一括で管理すれば作業はシンプルになり、全体像を見やすくなる利点もあります。しかし一歩踏み込むと、その「まとめ方」や「分け方」が営業成果に直結していることが分かります。

同じ商材を扱う場合でも、相手の部署によって関心の持ち方は異なります。人事部が注目する観点と情報システム部が重視するポイントは当然ながら一致しません。地域によっても事情は変わり、都市部と地方では競合の状況や購買の意思決定スピードが異なる場合があります。さらに企業規模が違えば、求められる提案の深さや意思決定のプロセスに大きな差が生まれます。こうした多様な相手に一律のアプローチをしてしまうと、情報の精度が下がり、営業担当者が時間を費やしても成果に結び付きにくくなります。

逆に、リストを分けて運用すれば、営業担当者は対象に即した提案を準備できるようになります。特定の部署に特化したメッセージを組み立てたり、地域の状況を踏まえた調整を行ったりと、接触の質を高めることが可能です。また、企業規模で区切ることで「大企業は時間をかけて深耕」「中小企業はスピード重視」という戦略的な配分も考えやすくなります。つまり、リストをどう構造化するかで、営業活動の効率と成果が大きく変わるのです。

このように「分けるか、分けないか」という選択は単なる管理上の問題ではなく、営業の生産性や成果を左右する要素です。日常的には見落とされやすいものの、ここを戦略的に見直すことができるかどうかが、成果を高める営業リスト活用の第一歩となります。

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部署別に分けることで見えてくる違い

同じ企業に属していても、部署が異なれば抱えている課題や意思決定の観点はまったく違います。情報システム部はシステムの安定稼働やセキュリティを最優先に考える一方で、人事部は採用や人材育成に直結する要素を重視します。経営企画部や財務部に目を向ければ、関心は業績への影響やコストの妥当性へと移ります。つまり「企業単位のリスト」だけでは、この多様な関心の分岐を十分に捉えることができません。

部署ごとにリストを切り分けて整理すれば、営業担当者は相手の立場に即した情報を準備しやすくなります。たとえば同じ商材でも、情報システム部向けには導入後の運用負荷やセキュリティ強化を訴求し、人事部向けには業務効率や従業員体験への効果を示すといった具合に、メッセージを最適化できます。この調整は、一括リストでは見落とされがちな観点です。

さらに、部署別リストを持つことは社内の営業体制とも親和性があります。営業担当者のなかには、ある部署との会話に強みを持つ人材もいれば、逆に不得手な領域もあります。リストを部署別に分けておけば、担当者の専門性に応じて割り振ることが可能になり、提案の質を底上げできます。

一方で、分け方には注意も必要です。細かく分けすぎれば、リスト管理が煩雑になり、部署ごとの母数が小さくなりすぎることもあります。また、ひとつの部署にしか接触していない場合、企業全体の意思決定に影響を及ぼせないという限界も見えてきます。部署別の切り分けは有効である一方、他部署との連携や全体像の把握をどう維持するかが課題となります。

このように、部署別の視点を持つことで営業の切り口は明確になり、成果に直結するアプローチが可能となります。ただし、その活用は「分ければよい」という単純な話ではなく、リスト管理の効率性や全社的な顧客像とのバランスを取ることが不可欠です。

地域別のリストが持つ意味

営業活動では、一般的に担当者ごとに地域が割り当てられています。支社や拠点を基盤にしてエリアを分担する体制は、多くの組織で採用されており、その範囲ごとにリストを持つのが基本的な運用です。地域別のリストは、担当者が自身のエリアに集中し、活動の重複や漏れを防ぐうえで欠かせない仕組みとなっています。

ただし、地域で区切ること自体は当たり前であっても、その扱い方次第で成果に差が生まれます。都市部と地方では競合状況や意思決定のスピード感が異なり、同じ提案でも受け止められ方に違いが出ることがあります。また、ある地域では価格感度が高く、別の地域では長期的な関係性が重視されるといった特徴もあります。単に地理的に分けただけのリスト運用にとどまれば、こうした差を活かすことができません。

地域別リストを有効に機能させるには、エリアごとの商習慣や市場の傾向を整理し、営業戦略に反映させる視点が必要です。さらに、複数の地域にまたがって取引を拡大している企業の動きを捉えるには、エリア別の情報を統合して全体像を確認する仕組みも重要です。

つまり、地域別リストは「担当範囲を整理するための道具」で終わらせず、「地域性を踏まえて戦略を組み立てる基盤」として位置づけることがポイントです。どのように扱うかによって、同じ地域別リストでも営業成果に大きな違いが生まれます。

企業規模で切るメリットと注意点

営業リストを企業規模ごとに分けることには、明確な利点があります。大企業と中小企業では、意思決定の仕組みも購買に対する姿勢も大きく異なります。大企業は複数部署や階層を経由して合意形成が行われることが多く、提案から成約までのプロセスが長期化する傾向があります。その分、個別ニーズを丁寧に掘り下げ、説得材料を積み重ねるようなアプローチが求められます。これに対して中小企業は、経営層が意思決定に直接関与する場合が多く、スピード感を重視する提案が効果を発揮します。

この違いを踏まえてリストを企業規模別に切れば、営業担当者は自社リソースの配分を戦略的に考えやすくなります。たとえば、大企業リストには深耕型のアプローチを割り当て、中小企業リストには数を重視した短期的な接触を組み合わせるといった判断が可能になります。全てを同じリストで扱う場合に比べ、アプローチの精度と効率は格段に高まります。

一方で、企業規模で区切る際には注意も必要です。規模の線引きは必ずしも明確ではなく、従業員数や売上規模で分ける基準を定めても、成長途中の企業や業種特性によって分類が難しいケースが出てきます。また、大企業と中小企業の両方にまたがって活動している企業もあり、単純に区分けすると実態を見誤るリスクがあります。

さらに、規模別の切り分けに偏りすぎると、「中小企業だから短期型」「大企業だから長期型」といった固定的な見方に陥りがちです。実際には中小企業でも長期的に検討を行うケースがあれば、大企業でも迅速に意思決定を下す場合があります。リストの設計を出発点にしつつも、実際の動きを観察して柔軟に対応する姿勢が欠かせません。

つまり、企業規模で切ることは営業効率を高めるための有効な方法ですが、それはあくまで「目安」として活用すべきです。リストを分けること自体が目的化すると、本来捉えるべき相手企業の実態を見失いかねません。リストの切り方と現場での実際のやり取りをどう結びつけるかが、成果につながるかどうかを分ける鍵となります。

「分けすぎ」と「まとめすぎ」の間で考える

営業リストの活用で最も難しいのは、「どこまで分けるべきか」という判断です。部署別・地域別・規模別の切り口は分かりやすい一方で、それをどの程度の粒度で適用するかは明確な正解がありません。リストを細かく分ければ、相手に即した提案はしやすくなりますが、母数が小さくなり、かえって接触機会を減らす可能性があります。逆に一括にまとめれば全体像は把握しやすいものの、アプローチが一律化し、刺さる提案から遠ざかってしまいます。

この「分けすぎ」と「まとめすぎ」の間にこそ、実務上の盲点があります。多くの現場では「とりあえず部署別」「とりあえず地域別」といった切り方にとどまりがちです。しかし重要なのは、分け方そのものを目的化しないことです。分けすぎれば「営業リストが小分けになっただけ」で終わり、まとめすぎれば「誰にでも当てはまる情報」しか残らない。営業の質を高めるには、その中間点を探る視点が欠かせません。

たとえば、部署別にリストを作る場合でも、全ての部署を網羅的に分ける必要はありません。特に接点が多い部署や、商材にとって決定的な影響を持つ部署に限定して切り分ければ、管理の手間と営業効果の両立が可能になります。地域別リストでも同様で、全地域を細かく分けるのではなく、戦略的に重点を置くエリアを選び、その部分だけを別建てにする方法があります。企業規模に関しても、細かく階層化するのではなく「大口」と「それ以外」のようなシンプルな分け方で十分な場合があります。

つまり、営業リストは「できる限り細かく分ける」ことが目的ではなく、「営業成果につながる分け方を選ぶ」ことが本質です。分けすぎとまとめすぎの両極端に陥らず、どの切り口を優先し、どこはあえて統合して全体像を見渡すのか。その設計が営業リストを単なる情報集から、成果を生み出す戦略的資産へと変える鍵になります。

まとめ

営業リストは、単に顧客情報を集めて整理するための道具ではなく、営業活動そのものを形づくる基盤です。部署別・地域別・企業規模別といった切り口で分けることには、それぞれに明確な意味があります。しかし、それらを実務でどう活かすかを考える際に重要なのは、分け方そのものに答えがあるわけではない、という点です。

部署別に分ければ専門性を活かしやすく、地域別に分ければ商習慣に対応しやすく、規模別に分ければリソース配分が戦略的に行えます。けれども、いずれも「分けすぎれば煩雑に、まとめすぎれば平板に」という両極端のリスクを抱えています。リストを戦略的に活用するということは、この間にある適切なバランスを見つけることに他なりません。

重要なのは、「自社にとって成果を最大化できる分け方は何か」という視点を持ち続けることです。必ずしも万能の分け方が存在するわけではなく、商材や市場、営業体制によって最適な構造は変わります。営業リストをただ作るだけでなく、どう設計し、どう運用するかを考え続けることが、最終的に営業成果を大きく左右します。

営業リストは情報の束にとどまらず、戦略を映し出す鏡のような存在です。「分けるか、まとめるか」という単純な二択ではなく、その間でどう線を引くかを見直すことこそが、営業活動を一段引き上げる鍵となります。

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