2026-01-27
研修・セミナーの新規集客を参加判断から考える ― 情報接点と意思決定の整理
BtoB 営業・マーケティング コラム
研修やセミナーを企画する際、「新規参加者をどう集めるか」は多くの担当者が直面するテーマです。告知手法や集客チャネルは数多く存在するものの、工夫して情報を届けても思うように参加につながらない、と感じる場面も少なくありません。
しかし、その要因を単に「告知が足りない」「施策が弱い」と片付けてしまうと、問題の本質を見誤る可能性があります。新規参加者の集客が難しく感じられる背景には、参加を決める側の判断構造や、不確実性に対する心理的なハードルが関係しています。
本記事では、研修・セミナーの新規参加者集客について、具体的な手法の紹介に入る前に、「なぜ難しいと感じられるのか」という理由を整理します。その上で、集客チャネルや情報接点の役割を参加判断の観点から捉え直し、考えるための視点を提示します。
目次
新規参加者集客が難しい理由は何か
研修やセミナーの集客において、「新規参加者」が集まりにくいと感じられる場面は少なくありません。このとき、告知方法や集客チャネルの選択が原因として挙げられることが多いものの、それだけで説明できないケースも多く見られます。
新規参加者集客が難しいと感じられる理由は、集客手法以前に、参加を判断する側の状況や前提に目を向けることで整理できます。
まず、新規参加者は、研修やセミナーの内容や価値を実体験として知りません。過去に参加した経験がある場合と異なり、「参加してみてどうだったか」という判断材料を持たない状態で意思決定を行う必要があります。この不確実性は、研修・セミナーという形式そのものに内在するものであり、主催者側がどれだけ丁寧に情報を提示しても、完全に解消することはできません。
次に、新規参加者は、提示された情報を自分自身の状況や課題と照らし合わせながら、「本当に自分に関係があるのか」「今のタイミングで参加すべきか」を考えます。この判断は必ずしも論理的に整理されるものではなく、断片的な情報や印象に基づいて行われることも少なくありません。その結果、内容自体に関心があっても、参加という行動にまでは至らない状態が生まれます。
また、新規参加者集客では、「集まらなかった理由」が見えにくい点も難しさを助長します。既存参加者であれば、参加・不参加の理由を直接的に把握できる場合がありますが、新規参加者の場合、そもそも接点が限られているため、判断の過程が可視化されにくい傾向があります。そのため、集客の結果だけを見て「反応が悪かった」「魅力が伝わらなかった」と結論付けてしまいがちです。
こうした要素を踏まえると、新規参加者集客が難しいと感じられる背景には、「告知が足りない」「施策が弱い」といった単純な問題設定では捉えきれない構造が存在していることが分かります。集客の問題として現れている事象の多くは、実際には参加判断の問題であり、その判断がどのように行われているのかを理解しない限り、改善の方向性も定まりません。
新規参加者はどのように参加を判断しているのか
新規参加者が研修やセミナーへの参加を検討する際、その判断は段階的に行われているように見えて、実際にはかなり短時間で方向づけられていることが多いものです。多くの場合、「参加するかどうか」を本格的に検討する前に、「今回は見送る」「今ではない」といった結論が暗黙のうちに置かれています。
この背景には、新規参加者が置かれている情報環境があります。初めて接する研修やセミナーについて、参加者は十分な判断材料を持っていません。提示されている情報はあくまで主催者側が用意した説明であり、それが実際に自分の状況に当てはまるかどうかは、参加してみなければ分からない部分が残ります。この不確実性がある状態では、判断は慎重になりやすく、積極的な決断よりも先送りが選ばれやすくなります。
また、新規参加者は、自身の課題や関心を明確な言葉として整理できていない場合も少なくありません。そのため、研修やセミナーの説明文を細かく読み込んで理解しようとするよりも、「自分に関係がありそうか」「違和感はないか」といった印象を手がかりに判断します。この段階で明確な引っ掛かりが得られない場合、内容に一定の価値を感じていたとしても、参加という行動にはつながりにくくなります。
さらに、新規参加者の判断では、得られる価値と同時に、失われる可能性のあるものも意識されます。研修やセミナーへの参加は、時間を確保し、場合によっては業務の優先順位を調整する必要があります。参加後に「思っていた内容と違った」「自分には合わなかった」と感じる可能性が少しでも想像されると、その不安が判断を抑制する方向に働きます。その結果、内容そのものを否定していなくても、「今回は見送る」という選択がなされます。
このように、新規参加者の参加判断は、情報を十分に比較検討した結果というよりも、不確実性をどの程度受け入れられるかという感覚的な線引きによって左右されます。主催者側が伝えたい情報が多く用意されていたとしても、そのすべてが判断材料として使われているわけではありません。実際には、ごく限られた情報や印象が、参加・不参加の分岐点になっています。
新規参加者集客を考える際には、「なぜ参加しなかったのか」という問いに対して、内容や条件だけで理由を探そうとすると、判断の実態を捉えきれなくなります。参加判断は、明確な否定ではなく、判断を保留する形で行われることが多いという前提に立つことで、集客の見え方も変わってきます。
具体的には、新規参加者の多くが「参加しない」という結論ではなく、「今回は見送る」「今ではない」という状態にとどまっている可能性を想定できるようになります。この状態は、研修やセミナーの内容そのものを否定した結果ではなく、判断を完了させるだけの材料や確信が揃わなかったことによって生まれるものです。
主催者側から見ると、申し込みに至らなかった事実だけが残るため、「関心を持たれなかった」「訴求が弱かった」と解釈されがちですが、実際には関心が存在していた可能性も十分にあります。ただし、その関心は行動に変換される前の段階にとどまっており、参加という決断に至るまでの一歩が踏み出されていない状態です。
このように、新規参加者の参加判断は、賛成か反対かの二択で完結するものではありません。判断が保留されたまま時間が経過し、そのまま機会が過ぎていくケースも多く見られます。集客の結果だけを見て評価を行うと、この「保留された判断」が見えなくなり、新規参加者集客の難しさを正確に捉えにくくなります。
新規参加者集客を考える際には、参加しなかった理由を単純化せず、「判断が完了していない状態が存在する」という前提に立つことが重要になります。この前提を共有することで、どの情報が判断に影響しやすいのか、どの接点が意思決定に関与しているのかといった論点を、より具体的に考えられるようになります。
新規参加者が最初に見ている情報は何か
新規参加者が研修やセミナーの情報に触れたとき、最初から内容を精査しているとは限りません。多くの場合、参加を検討するかどうかの判断は、ごく限られた情報を手がかりに行われています。この段階で参照されているのは、詳細なプログラムや網羅的な説明ではなく、「これは自分に関係がありそうか」を判断するための初期情報です。
まず見られやすいのは、研修やセミナーのテーマやタイトルです。ここで重要なのは、内容の正確さや網羅性よりも、「自分の状況と接点がありそうかどうか」という感覚です。抽象度が高すぎる表現や、対象が広く見えるテーマは、多くの人に当てはまりそうに見える一方で、新規参加者にとっては「自分向けかどうか」を判断しづらくする要因にもなります。
次に、新規参加者は、主催者や講師に関する情報にも目を向けます。ただし、この段階で詳細な経歴や実績を読み込んでいるとは限りません。重要なのは、「知らない存在でも安心できそうか」「違和感を覚えないか」といった印象です。信頼できるかどうかは、この時点では論理的に評価されるというよりも、全体の雰囲気や情報の出し方から総合的に判断されることが多くなります。
また、開催の背景や問題意識がどのように示されているかも、初期判断に影響します。なぜこの研修やセミナーを開催するのか、どのような課題意識から企画されたのかが伝わると、新規参加者は自分の状況と照らし合わせやすくなります。一方で、背景が見えにくい場合、「自分が参加する理由」を想像しづらくなり、判断が先送りされやすくなります。
新規参加者は、こうした情報を一つひとつ丁寧に比較検討しているわけではありません。実際には、「引っ掛かりがあるか」「不安を感じないか」といった感覚的なチェックを短時間で行っています。この段階で明確な納得や安心が得られなければ、内容自体に一定の関心があったとしても、判断は保留されます。
このように、参加判断の初期段階で見られている情報は限られており、その多くは「判断を進めるための材料」というよりも、「判断を止めないための条件」として機能しています。新規参加者集客を考える際には、詳細な情報をどれだけ用意するか以前に、最初に目に入る情報がどのように受け取られているかを整理することが欠かせません。
集客チャネルは「手段」ではなく「接点」として捉える
研修やセミナーの集客を考える際、「どのチャネルを使うか」は避けて通れない論点です。しかし、この問いを「有効な手段は何か」という形で立ててしまうと、新規参加者集客における本質が見えにくくなります。チャネルは成果を生み出すための装置というよりも、新規参加者が情報に触れる「接点」として捉えるほうが、実態に近い場合があります。
新規参加者は、特定のチャネルだけを見て参加を判断しているわけではありません。Webサイト、メール、紹介、SNSなど、複数の接点を通じて断片的に情報に触れながら、全体の印象を形成しています。このとき、それぞれのチャネルは独立して評価されているのではなく、「この研修・セミナーは自分に関係がありそうか」「違和感はないか」といった判断を補強、あるいは弱める役割を果たしています。
重要なのは、チャネルごとに伝えられる情報量や表現の差ではなく、接点としてどのような位置づけで機能しているかです。初めて情報に触れる入口としての接点もあれば、関心を持った後に再確認するための接点もあります。同じ内容であっても、どのタイミングで、どの文脈で接するかによって、受け取られ方は変わります。
また、新規参加者の判断が保留されがちな状態にあることを踏まえると、チャネルは「参加を決めさせるためのもの」というよりも、「判断を止めないためのもの」として機能している側面があります。情報に触れた際に違和感や不安が生じなければ、判断は保留されたまま次の接点へと持ち越されます。一方で、どこかの接点で引っ掛かりが生じると、その時点で判断が止まり、参加の検討自体が中断されることもあります。
このように考えると、集客チャネルを単体で評価することには限界があります。「どのチャネルが強いか」「どれを優先すべきか」という問いよりも、「それぞれの接点が判断のどの段階に関わっているのか」を整理することが重要になります。新規参加者集客では、チャネル同士の優劣よりも、接点としての役割分担が問われていると言えます。
集客チャネルを「手段」ではなく「接点」として捉え直すことで、新規参加者の判断プロセスと情報設計の関係が見えやすくなります。この視点に立つと、チャネルの選択や組み合わせは、単なる施策の話ではなく、参加判断を支える情報の流れとして整理できるようになります。
郵便DMが新規参加者集客で果たし得る役割
集客チャネルを「接点」として捉えたとき、郵便DMは他のチャネルとは異なる性質を持っています。それは、情報の到達方法や受け取られ方が、デジタルを前提とした接点とは大きく異なる点にあります。この違いは、新規参加者の判断が保留されやすい状況において、独自の意味を持ち得ます。
新規参加者は、日常的に多くの情報に触れています。Webやメール、SNSなどのデジタルチャネルでは、情報は連続的に流れ込み、並列的に比較されやすい環境に置かれています。その中で研修やセミナーの情報に触れた場合、「後で見返せる」「今すぐ判断しなくてもよい」と受け取られ、判断が先送りされることも少なくありません。
一方、郵便DMは、物理的に手元に届く情報であり、受け取りのタイミングや環境が限定されます。情報が一覧の中に埋もれるのではなく、「一度目に入る」「一度手に取る」という体験を伴う点は、接点としての特徴と言えます。この体験そのものが、判断を促すというよりも、判断を止めないためのきっかけとして機能する場合があります。
また、郵便DMは、情報が即座に消えていかない点でも特徴的です。デジタル情報の多くは、表示された瞬間に評価され、その場で判断が行われますが、郵便DMの場合、「手元に残る」という性質があります。この残存性は、新規参加者が判断を保留している状態において、後から再度情報に触れる機会を生み出します。結果として、参加判断が完了するまでの時間軸に寄り添う接点になり得ます。
さらに、郵便DMは、情報の受け取られ方に一定の文脈を与えます。誰に向けて送られているのか、どのような意図で届けられているのかが想像されやすく、無差別に流れてきた情報とは異なる印象を与えることがあります。新規参加者にとって、この「自分に向けられているように感じられるかどうか」は、判断を進める上で無視できない要素です。
こうした点を踏まえると、郵便DMは「参加を決めさせる強力な手段」というよりも、新規参加者の判断プロセスの中で、情報に立ち止まるきっかけをつくる接点として位置づけるほうが適切です。判断が保留されがちな状況において、郵便DMはその保留状態に割り込むのではなく、並走する形で存在する接点と言えます。
郵便DMを新規参加者集客の文脈で考える際には、他のチャネルと置き換えるものとして捉えるのではなく、判断のどの段階に関わり得るのか、どのような役割を担わせるのかを整理することが重要になります。この視点に立つことで、郵便DMは単なる集客手段ではなく、新規参加者の参加判断を支える情報接点の一つとして位置づけられるようになります。
実在する研究や公的事例から読み取れる示唆
ここまで、新規参加者集客について、参加判断の進み方や情報接触のあり方を整理してきました。こうした整理は、個別の現場感覚に依拠したものではなく、研修や学習への参加行動を対象とした研究や公的調査の結果とも重なる部分があります。
成人学習理論の分野では、学習への参加が「必要性の認識」だけで決まるわけではないことが指摘されています。Knowles らによる成人学習に関する研究※1 では、成人の学習者は、自らの経験や現在の状況を基準に、「自分にとって意味があるか」「今取り組む必然性があるか」を重視すると整理されています。この整理からは、研修やセミナーの内容に一定の関心を持っていても、参加という行動に直ちに結び付くとは限らないことが読み取れます。
また、OECD が公表している成人学習に関する調査※2 では、学習参加を妨げる要因として、「時間の制約」や「他の活動との優先度の調整」が繰り返し挙げられています。これらは学習内容そのものへの否定を意味するものではなく、学習の価値を理解していても、参加判断が進まないまま見送られる状況が生じていることを示しています。
国内の公的調査からも、同様の傾向が確認できます。独立行政法人情報処理推進機構が公表している人材育成に関する調査※3 では、研修や学習機会の存在を認知している層と、実際に参加している層の間に差が生じていることが示されています。この差は、情報が届いていないことだけで説明できるものではなく、参加を判断する段階で検討が止まっている状況が一定数存在することを示唆しています。
さらに、公的教育機関や自治体が実施している研修・講座の募集事例を見ても、参加者募集においては、内容の詳細説明に加えて、「どのような立場の人に向けたものか」「どのような課題意識から企画されたのか」を明確に示す工夫が行われています。こうした情報設計は、参加判断の初期段階で参照される情報が限られていることを前提とした対応と捉えることができます。
これらの研究や公的調査を通して見ると、研修や学習への参加が、内容の充実度や情報量だけで決まるものではないことが分かります。参加の価値を理解していても、時間的制約や優先度の問題、不確実性への慎重さなどによって、判断が進まず、そのまま参加に至らない状況が生じやすいことが、複数の調査で示されています。
新規参加者集客を考える際には、こうした調査結果が示しているように、「参加しない」という結果の背後に、判断が完了していない段階が存在する可能性を想定しておくことで、集客の状況をより実態に近い形で捉えることができます。
【出典】
※1 Knowles, M. S., Holton, E. F., & Swanson, R. A. (2015). The Adult Learner. Routledge.
※2 OECD (2019). Getting Skills Right: Future-Ready Adult Learning Systems. OECD Publishing.
※3 独立行政法人情報処理推進機構(2022)『IT人材白書』
まとめ
本稿では、研修・セミナーの新規参加者集客について、手法や施策の前に、参加判断がどのように行われているのかを整理してきました。新規参加者は、十分な判断材料を持たない状態で情報に触れており、明確な否定ではなく、判断を保留したまま参加に至らないケースも少なくありません。
こうした判断のあり方を前提にすると、集客の見え方は変わります。参加がなかった結果だけをもって関心の有無を判断するのではなく、判断が完了していない段階が存在する可能性を想定することで、状況をより実態に近い形で捉えられるようになります。
また、新規参加者が最初に参照する情報は限られており、詳細な説明よりも、テーマの分かりやすさや安心感といった初期印象が判断に影響します。集客チャネルについても、成果を生む手段としてではなく、判断の各段階で情報に触れる接点として整理することで、その役割が見えやすくなります。郵便DMを含む各種チャネルは、判断を急がせるものではなく、判断が進む過程に関わる存在として位置づけることができます。
実在する研究や公的調査からも、研修や学習への参加が、内容や情報量だけで決まるものではないことが示されています。新規参加者集客を考える際には、こうした前提を踏まえ、参加判断がどこで止まりやすいのかを整理するところから、検討を始めることになります。








