2025-06-12

意思決定プロセス設計による“案件推進ロードマップ”構築

BtoB 営業・マーケティング コラム

案件推進の現場では、「途中まで順調だったのに停滞してしまう」「なぜか前に進まない」といった壁に直面することが少なくありません。その背景には、相手先の意思決定プロセスが十分に把握できていなかったり、プロセス設計が曖昧なまま進めてしまったりするケースが多く見受けられます。

目の前のやり取りや進捗管理だけに目を向けていても、思うように案件が動かない状況はなかなか解消できません。大切なのは、案件ごとに異なる意思決定の流れや関与者を読み取り、それに合わせた“案件推進ロードマップ”を構築する視点です。

本記事では、意思決定プロセスの設計という切り口から、案件推進を着実に前進させるための考え方や実践のポイントについて解説します。

案件が“動かない”理由を捉え直す

案件を進めていく中で、「なぜ動かないのか」という壁にぶつかる場面は誰しも経験するものです。期日までに必要な資料を提出した、何度も面談を重ねた、それでも次のステップに進まない――。こうした停滞には、いくつかの典型的なパターンがあります。

たとえば、こちらからのアクションが相手に届いているのに反応が薄い場合や、担当者レベルでは前向きな反応があっても、一定の段階を超えると意思決定が進まなくなる場合などです。こうした状況では、つい「相手の優先度が下がったのではないか」「自社の提案に魅力が足りなかったのか」といった表面的な理由に目が向きがちです。

しかし、こうした停滞の多くは、実は相手企業の内部で進む意思決定プロセスが見えにくいことが根本にあります。目の前の担当者の動きだけを追いかけていても、組織の中でどのような段取りや承認が必要なのか、誰がどのタイミングで関与するのかが把握できていなければ、肝心の意思決定にたどり着くことは難しくなります。

案件推進においては、進捗管理や面談回数の多さだけでなく、相手の意思決定構造そのものをいかに理解できるかが大きなポイントとなります。案件が“動かない”と感じたときこそ、目の前の事象の奥にある構造や流れを捉え直すことが、次の一手を考える上で重要なヒントになるはずです。

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意思決定プロセスを“設計”するという視点

案件推進において、つい「いま何をすべきか」「次に誰に会うべきか」といった目先の行動に意識が向きがちです。しかし、そうした場当たり的な進め方では、組織の意思決定の全体像を見失いがちです。ここで重要なのが、「意思決定プロセスを設計する」という視点です。

意思決定プロセスの設計とは、単に相手の承認フローをなぞることではありません。案件ごとに異なるステークホルダーや、関与する部門の役割、意思決定の流れを意識的に分解し、それぞれのステップで必要となるアクションやコミュニケーションを明確にしていくことが求められます。

たとえば、担当者との打ち合わせの次に、どの部門がどのような観点で判断に関わるのか、上層部の意思決定にはどんな材料が必要なのか、といった流れを事前に設計しておくことで、無駄な停滞や行き当たりばったりの対応を避けやすくなります。単なる進捗管理とは異なり、意思決定プロセスを「設計課題」として捉えることで、より戦略的に案件を動かすことができるようになります。

また、プロセスの設計には柔軟性も欠かせません。組織ごとに意思決定の特徴やスピード感は異なるため、事前に組み立てた設計図をベースにしつつ、現場の変化に応じて見直していくことも重要です。こうした姿勢が、案件推進の精度を高め、次のアクションを迷いなく選択できる力につながります。

意思決定プロセスを分解する

意思決定プロセスを具体的に設計するためには、まずその流れを一つひとつ分解して捉えることが欠かせません。多くの案件では、表面上はシンプルに見えても、実際には複数の段階や関与者が存在し、それぞれのタイミングで異なる判断や承認が行われています。

まず注目すべきは、意思決定の「ステップ」と「関与者」です。案件によっては、現場担当者による検討から始まり、課長や部長クラスでの合意形成、最終的な役員会での承認、といった複数の階層を経るケースも少なくありません。また、こうした公式なフローだけでなく、実際には非公式な打診や水面下での調整が進んでいることもよくあります。

次に、各ステップでどのような情報や判断基準が必要とされているのかを整理します。担当者が重視する点と、経営層が注目するポイントは大きく異なる場合が多いため、それぞれの関与者に適した情報提供や説明が求められます。

また、進行中の案件がどこで止まりやすいのか、どの部分でリスクが高まるのかを見極めておくことで、想定外の停滞を防ぐための備えにもなります。

このように意思決定プロセスを分解して捉えることで、案件推進のために「何を」「誰に」「どのタイミングで」働きかけるべきかが具体的に見えてきます。表面的な流れだけでなく、非公式な合意形成や個々の関与者の役割までを意識的に整理することが、効果的なロードマップ設計の土台となります。

案件推進ロードマップの設計

意思決定プロセスを分解できたら、次はそれをもとに具体的な「案件推進ロードマップ」を設計していく段階です。ロードマップとは、案件を最終的な決定に導くまでの道筋を、ステップごとに可視化したものです。これによって、進行状況をより客観的に捉え、次に取るべきアクションが明確になります。

まず、各ステップで必要となる行動や資料、関与者とのコミュニケーション内容を整理しましょう。たとえば、初期段階では現場担当者の理解を得るための提案説明や質疑応答が中心となり、中盤以降は決裁権限を持つ部門や役員層への追加情報提供や課題のクリアが必要になる場合があります。各段階で何が期待され、どのような承認が求められるのかを具体的に書き出すことで、曖昧さを減らすことができます。

また、ロードマップを設計する際には、単に「フロー図」として整理するだけでなく、柔軟性も意識することが重要です。想定外のイレギュラーが発生した場合には、どのように対応を修正するか、どのタイミングで見直すかといった判断基準を持っておくことが、実務上の安心感につながります。

さらに、進行中の状況や関与者の反応をもとに、ロードマップ自体も定期的にアップデートしていく姿勢が大切です。案件によっては新たな関係者が登場したり、意思決定の条件が変化したりすることも珍しくありません。こうした変化を迅速に反映できるよう、関係者間でロードマップの内容を共有し、常に最新の状態に保つことが求められます。

このように、案件推進ロードマップを設計することで、プロセス全体の見通しが立ちやすくなり、無駄な停滞や抜け漏れを防ぎやすくなります。具体的な行動計画を持って進めることで、案件を着実に前進させるための道筋が明確になります。

「属人的」な推進からの脱却

案件推進が思うように進まない理由の一つに、「特定の担当者の経験や勘に頼りすぎてしまう」という課題があります。いわゆる“属人的”な推進は、担当者が持つ個別の人脈やノウハウによって支えられていることが多く、うまくいく場面も確かにあります。しかし、その一方で、担当者が不在になったときや案件が複雑化したとき、情報や判断の基準が共有されていないために、組織全体としての推進力が落ちてしまうリスクもあります。

このような課題を克服するためには、案件推進のプロセスや判断基準を“見える化”し、組織で共有することが不可欠です。意思決定プロセスを分解し、ロードマップとして整理しておくことで、個々の担当者の暗黙知がナレッジとして蓄積され、他のメンバーも同じ視点で案件に関与できるようになります。

また、チーム全体で案件の進捗や課題、関与者への働きかけの状況をオープンにすることで、「誰か一人に頼りきる」状態から、「チームで動かす」体制へと自然にシフトしていきます。メンバー同士で気づきを共有したり、異なる視点からアドバイスを出し合ったりすることで、属人的なリスクを最小限に抑えることが可能になります。

こうした仕組み化・ナレッジ化の取り組みは、一朝一夕で完成するものではありませんが、長期的に見れば案件推進の精度やスピードを着実に高めていく基盤となります。担当者個人の力量だけに頼るのではなく、組織全体で意思決定プロセスを設計・運用する意識が、安定した案件推進の実現につながります。

案件推進ロードマップ運用の実践ポイント

案件推進ロードマップを設計した後は、それを現場でどう運用するかが成否を分けるポイントになります。設計段階でどれだけ綿密に計画を立てていても、実際の案件推進では想定通りに進まないことが多いため、柔軟かつ現実的な対応が求められます。

まず意識したいのは、ロードマップを“使いっぱなし”にしないことです。一度作った計画に固執せず、状況に応じて見直しや修正を重ねる姿勢が重要です。関与者の交代や意思決定基準の変更など、プロセスそのものが動的に変化する場合もあります。最新の状況を正しく捉え、必要なタイミングでロードマップをアップデートしていくことで、案件推進の精度を保つことができます。

また、運用の過程では「誰が」「どのような役割で」動いているかを明確にしておくことも大切です。各メンバーの動きを可視化し、役割分担や情報共有の仕組みを整えておくことで、チーム全体としての推進力が高まります。特定の担当者だけに負荷が集中しないよう、進捗状況や課題もオープンにしておくとよいでしょう。

さらに、現場で得られた学びや気づきは次の案件にも活かせる貴重な資産です。運用中に発生したイレギュラーな対応や、関与者の反応なども記録しておくことで、今後のロードマップ設計や推進手法の改善に役立ちます。案件が完了した後の振り返りも含め、経験をナレッジとして積み上げていく意識が、継続的な成長につながります。

このように、案件推進ロードマップの運用では「状況の変化に合わせて柔軟に見直すこと」「チームで共有しながら進めること」「学びを次に活かすこと」が重要なポイントとなります。日々の実践の中でこうした姿勢を持ち続けることが、案件を着実に前進させる力となります。

まとめ

案件推進を着実に進めるためには、相手先の意思決定プロセスを深く理解し、それに合わせてロードマップを設計・運用する視点が不可欠です。進捗管理やアクションの積み重ねだけでは見えてこない停滞の要因も、意思決定の流れを分解し、具体的なステップごとに必要な対応を整理することで、より明確になります。

また、案件推進を特定の担当者のノウハウや経験だけに頼らず、チーム全体でプロセスやナレッジを共有していくことが、再現性のある動きにつながります。ロードマップを柔軟に運用し、現場で得た学びを次に活かしていくことで、案件推進の精度も自然と高まっていくはずです。

変化の多い環境下においても、意思決定プロセスの設計とロードマップの活用という視点を持ち続けることで、一つひとつの案件を確実に前進させるための土台が築かれます。ぜひ今回の内容を、日々の案件推進の見直しや改善に役立ててください。

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