2025-07-08

顧客データを活かすRFM分析 ― シンプルな指標でヒントを見つける

BtoB 営業・マーケティング コラム

顧客との関係を深めるためには、まず相手のことをより深く知ることが欠かせません。その手段として注目されているのが「RFM分析」です。営業やマーケティングの現場では、従来から様々な顧客分析手法が使われてきましたが、複雑な分析に頼るほど、かえって本質的な気づきを見失いやすいという悩みも生まれています。そんな中、RFM分析はシンプルでありながら、顧客の特徴を立体的に捉えやすい方法として、改めて注目されています。

データを扱う現場では、単に「数値」を集めることが目的化しやすく、実際の営業活動やマーケティング戦略と結びつきにくいという課題も少なくありません。RFM分析は、そうした課題を乗り越えるための入り口としても役立つ考え方です。これまで複雑に見えていた顧客データが、少し視点を変えるだけで活用の幅を広げてくれることもあります。

本記事では、RFM分析の基本から実務への応用までを整理し、日々の顧客対応や戦略立案にどう生かせるのかを考えていきます。すでにデータ活用を始めている方はもちろん、これから取り組みを検討している方にも、ヒントとなる内容をお届けします。

RFM分析とは ― 基本的な考え方と指標の意味

RFM分析は、顧客ごとの購買行動を三つの視点から整理するシンプルなフレームワークです。「いつ」「どれくらい」「どの程度」という三つの軸で顧客を理解することで、自社との関係性をより明確に把握できます。

まず「R」とは「Recency(最新購買日)」の頭文字で、顧客が直近でいつ取引をしたかを示します。最近の購買がある顧客は、関心や期待が高まっている可能性があり、アプローチの優先度も自然と上がる傾向があります。

続いて「F」は「Frequency(購買頻度)」のことです。一定期間のなかでどれくらい取引があったかを表し、頻繁に取引がある顧客ほど、自社との結びつきが強いと捉えられます。たとえば、1年に1回の取引と、四半期ごとに継続的に取引がある顧客では、今後の関係づくりや提案の内容にも差が生まれやすくなります。

最後に「M」は「Monetary(購買金額)」です。これは顧客がどの程度の金額を自社に支払っているか、つまり経済的な貢献度を表します。高額な取引が継続している場合、その顧客へのサポート体制や、提供すべきサービスの質についても一段と注意を払う必要が出てきます。

この三つの視点を同時に捉えることで、単に「最近よく買っている顧客」や「たまに大きな取引をしている顧客」といった一面的な見方を避け、総合的な判断がしやすくなります。RFM分析の特徴は、複雑な計算や専門知識を必要とせず、基本的な取引データがあればすぐに始められる点にあります。その手軽さと汎用性が、多くの現場で活用されている理由の一つです。

また、RFM分析は単なる「顧客のランク付け」にとどまるものではありません。顧客とのやりとりの履歴や、今後の関係構築を考えるうえでの出発点としても活用できます。三つの指標それぞれが、今まで気付かなかった顧客の側面を見せてくれることも少なくありません。こうした視点の転換が、次の一手を考える際の新たなヒントとなります。

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RFM分析が有効となる理由

RFM分析が多くの現場で活用されている背景には、顧客データの捉え方や活用方法が変化してきたことがあります。近年では、取引の履歴や購買行動がシステム上に残りやすくなり、データの蓄積そのものは珍しいものではなくなりました。しかし、集めたデータをどのように整理し、実際の活動に結び付けるかという部分で、手が止まってしまうことも少なくありません。

RFM分析が有効とされる理由の一つは、「顧客の違い」を分かりやすく可視化できる点にあります。たとえば、同じ商品やサービスを提供していても、直近で取引のあった顧客と、しばらく動きがない顧客では、提案すべき内容やコミュニケーションの方法が自ずと変わってきます。RFM分析を用いることで、どの顧客が今アプローチすべき対象なのかを、数字をもとに判断できるようになります。

また、RFM分析はシンプルな構造でありながら、業種や商材、取引スタイルの違いに左右されにくい柔軟性も持っています。高額な取引が少数発生する業態でも、定期的な少額取引が多い業態でも、それぞれの取引実態に応じて指標を活用することができます。これにより、幅広いビジネスでの応用がしやすくなっています。

さらに、RFM分析はデータの偏りやノイズの影響を受けにくいという利点もあります。多くの複雑な分析手法では、データの量や質に大きく左右されてしまいますが、RFM分析は比較的少ないデータでも傾向をつかみやすく、現場の意思決定に素早くつなげやすい特徴があります。

こうした理由から、RFM分析は「分かりやすさ」と「現実への適用しやすさ」のバランスに優れており、現場感覚に沿ったデータ活用を実現しやすい手法といえます。日々の営業やマーケティングの場面で、顧客ごとの優先順位づけやアプローチ内容の検討など、具体的な行動に直結しやすい点も、多くの企業で選ばれる理由となっています。

RFM分析の進め方と基本ステップ

RFM分析を実際に行う際は、いくつかのシンプルなステップを踏んで進めていきます。難しい専門知識がなくても取り組めることが特徴であり、日々の業務にも組み込みやすい方法です。ここでは、その基本的な流れを整理します。

まず最初に行うのは、取引履歴データの整理です。各顧客ごとに「最新の取引日(R)」「一定期間内の取引回数(F)」「その期間の取引総額(M)」を抽出します。必要となるデータは、自社で日常的に管理している取引記録や顧客管理システムから取得できる場合がほとんどです。

次に、これら三つの指標について、それぞれの値に応じてスコアを付けていきます。たとえば、「直近で取引のあった顧客は高いスコア」、「取引頻度が多い顧客も高いスコア」、「取引金額が大きいほど高いスコア」といったように、各指標ごとに基準を設定し、顧客ごとに点数化します。スコアリングは、単純に上位から順に1~5点などのランク分けをするケースが多く、これだけでも傾向が見えてきます。

三つの指標それぞれでスコアを付与したら、次は顧客ごとに「RFMスコア」を作成します。たとえば「R=5、F=4、M=3」といった形で、三つの値が組み合わさったスコアとなります。このスコアをもとに、顧客をいくつかのグループ(セグメント)に分類していきます。よくあるパターンとしては、「全指標が高い最重要顧客群」や「最近は動きがないが過去には大きな取引のあった顧客群」など、特徴ごとに顧客を整理する方法です。

分類ができたら、それぞれのセグメントに応じたアプローチ方法を検討します。たとえば、全体の売上に貢献している顧客には継続的なフォローや特別な情報提供を行う、しばらく取引がなかった顧客には再アプローチのキャンペーンを企画する、など具体的な施策を考える際の基準として活用できます。

RFM分析の進め方は、複雑に見えても基本的な手順を押さえることで誰でも実践可能です。まずは、日々蓄積しているデータをもとに、無理なく始められる範囲から取り組んでみることが重要です。こうしたステップを繰り返すことで、分析結果が実際の営業活動やマーケティング施策に活かされやすくなります。

RFM分析で得られる主な示唆と注意点

RFM分析を実施すると、顧客ごとに異なる特徴や関係性が見えやすくなり、さまざまな気づきを得ることができます。たとえば、全体の取引額に大きく貢献している顧客や、最近の取引はないものの過去に高額な取引履歴がある顧客など、これまで一括りにされがちだった顧客層の違いが明確になります。こうした可視化は、今後の営業活動やマーケティング施策の優先順位を整理する上で大きな助けとなります。

また、RFMスコアをもとにグループ分けを行うことで、各セグメントに合わせたアプローチ方法を考えることができます。たとえば、「全指標が高い」顧客には、ロイヤルティを維持・強化するための提案や情報提供を重視し、「FやMが高いがRが低い」顧客には、再接点をつくるための働きかけを行うといった使い方が考えられます。これにより、画一的な対応ではなく、状況に応じた柔軟な対応がしやすくなります。

一方で、RFM分析を活用する際にはいくつかの注意点もあります。まず、スコアの付け方やグループ分けの基準が現場の実態に合っていないと、実際の行動につなげにくくなる恐れがあります。たとえば、取引頻度が高くても一件ごとの取引金額が極端に小さい場合や、単発で大きな取引があった顧客など、単純な数値の比較だけでは見落としやすいケースも出てきます。

また、RFM分析は「過去の取引履歴」に着目する手法であるため、これからのニーズ変化や市場の動きには十分に対応しきれない部分もあります。たとえば、新規事業の立ち上げや新たなサービス展開を検討する際には、RFM分析だけに頼らず、他の情報や視点も組み合わせて考えることが大切です。

さらに、データの更新が滞ってしまうと、現状に即した正確な分析ができなくなります。RFM分析を有効に活用するためには、定期的なデータメンテナンスと、分析結果を現場の業務に活かすための工夫が欠かせません。

このように、RFM分析は顧客理解の有力な手段となりますが、単に数値化するだけで満足せず、「実際の行動につなげるためのヒント」として活用する姿勢が重要です。現場の感覚と分析結果を結び付けながら、より的確なアプローチを考えていくことが求められます。

データ運用と現場定着に向けて

RFM分析を継続的に活用していくには、単に一度分析を行うだけでは不十分です。実際の業務に定着させ、日々の活動のなかで自然に活かせるような仕組みを作ることが大切です。そのためには、データの運用体制や現場との連携にいくつかの工夫が求められます。

まず、データの更新とメンテナンスを定期的に行うことが重要です。RFM分析の精度は、扱うデータの新しさや正確さに左右されます。営業やマーケティング現場で得られた情報をこまめにシステムへ反映する体制ができていれば、分析結果も実態に近いものとなり、現場での活用度も高まります。

次に、分析から得られた示唆を現場で具体的なアクションにつなげることがポイントになります。たとえば、定例の会議や施策検討の場でRFMの結果を共有し、顧客ごとに優先順位や対応方針を話し合うことで、データが「使われる」状態を作ることができます。現場での声やフィードバックを受けて、スコア付けやセグメントの基準を見直す柔軟さも大切です。

さらに、RFM分析を業務に組み込む際には、分析やデータ管理が特定の担当者だけの作業にならないよう注意が必要です。属人化を避けるためには、分析手順やデータの記録方法、結果の活用プロセスをマニュアル化し、誰でも一定の品質で実施できるようにしておくことが効果的です。

ツールやシステムの選定も、データ運用を円滑にする上で大きな役割を果たします。自社にとって使いやすい管理ツールや分析ツールを選び、現場の業務フローに違和感なく組み込めるよう設計することが、定着への近道となります。必要に応じて、既存の顧客管理システムや営業支援ツールと連携させることで、業務全体の効率化も実現しやすくなります。

このように、RFM分析を継続して活用するためには、データの管理体制・現場との連携・ツール選定など、複数の視点で運用方法を整えていくことが求められます。分析を「一度きりのイベント」で終わらせず、組織として日常的に使い続けられる環境を整えることが、成果につながるポイントです。

まとめ

RFM分析は、顧客の取引履歴をシンプルな三つの指標で整理し、現場での意思決定や施策立案に直結しやすい分析手法です。取引の「新しさ」「頻度」「金額」を客観的に可視化することで、今まで見えていなかった顧客ごとの違いや関係性が浮き彫りになり、優先順位や対応策の検討がしやすくなります。

重要なのは、RFM分析の結果を単なるランク付けや資料作成にとどめず、日々の業務や現場のアクションにどう生かしていくかを考えることです。データの定期的な更新や現場の声を取り入れた運用を続けることで、分析の精度も高まり、顧客との関係性をより深く築くきっかけにもなります。

RFM分析は特別な専門知識がなくても始めやすく、既存のデータからでもすぐに取り組むことができる実用的な手法です。自社の状況や目的に合わせて柔軟に活用し、分析から得た気づきを現場での具体的なアクションにつなげていくことが、より良い顧客対応やビジネスの成果につながります。これをきっかけに、日々の顧客理解とデータ活用を一歩前進させてみてはいかがでしょうか。

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