2025-05-15

役職者リストは“使い切って終わり”にしない ― 今の成果と、積み上げる資産の考え方

BtoB 営業・マーケティング コラム

営業活動に欠かせない役職者リスト。しかし、時間と共に情報が陳腐化し、「蓄積しても使えない」と感じることは少なくありません。

多くの企業では商談履歴や接点情報を何らかの形で記録していますが、それだけではリストが“資産”として機能することはありません。

企業との関係性を俯瞰し、戦略的に活用するためには、“リスト”そのものの捉え方を見直す必要があります。

本記事では、役職者リストを“使い切るもの”から“積み上げる資産”へと転換する考え方について解説します。

リストは“使い切るもの”という誤解

営業リストというと、「アプローチ先を一覧化したもの」という捉え方が一般的です。新規開拓やターゲットリストとして使われ、一定のアクションをかけ終えれば「消化した」とみなされる。このような運用が、役職者リストを“消耗品”として扱う原因になっています。

もちろん、リストを営業活動の起点として活用すること自体は間違っていません。しかし、「使い切ったら捨てる」という前提で運用していると、せっかく蓄積されるべき情報や関係性の軌跡が、次の機会に活かされることなく途切れてしまいます。

本来、役職者リストは単なる名簿ではなく、企業との関係性や意思決定構造を把握するための“資産”になり得るものです。「誰にアプローチするか」を決めるだけの道具ではなく、「どの層に対して、どのように関係を積み重ねるか」を考え、その軌跡を積み上げていくことで、リストは企業との向き合い方そのものを形にする基盤となります。

短期的な成果を求める営業活動のなかで、リストが使い捨てられるように扱われてしまうのは、ある意味で自然な流れかもしれません。限られたリソースで効率的に成果を上げるためには、目先のターゲットリストに集中することも必要です。

しかし、リストを“使い切るもの”として消費していく運用から一歩踏み出し、企業ごとの関係性や組織構造を意識しながら積み上げていけば、営業活動の精度はより高まり、次のアクションも取りやすくなります。

オンライン施策では難しい役職層にアプローチ!|ターゲットリスト総合ページ

役職者リストを“企業構造の地図”にする

営業リストは、しばしば「接触可能な個人の一覧」として扱われます。しかし、役職者リストが本来持つべき価値は、個々の人物情報だけにとどまりません。企業との関係性を立体的に把握し、その構造を読み解く“地図”としての役割こそが、本質的な資産価値を生み出します。

企業には、意思決定に関わるさまざまなレイヤーが存在します。決裁権を持つ役員層、事業方針を左右する部門責任者、現場で実行を担う管理職層。それぞれの層がどのように連携し、影響し合っているかを理解することは、的確な営業アプローチを行う上で欠かせません。

しかし、実際のリスト運用では、こうした“企業構造”を意識した設計がされていないケースが多く見受けられます。単に「連絡が取れる人物」を並べただけのリストでは、企業内での影響力や意思決定フローが見えず、的外れなアプローチに終わってしまうこともあります。

役職者リストを“企業構造の地図”として捉え直すことで、リストは単なる連絡先一覧から、より戦略的な活用が可能な資産へと昇華します。具体的には、以下のような観点が重要になります。

一つは、各層のキーマンを網羅的に把握することです。決裁者だけでなく、現場責任者や影響力を持つ関係者まで含め、組織内での役割や位置付けをリスト上で整理することで、企業の意思決定構造が浮かび上がります。

次に、役職者間の関係性を意識することも重要です。どの部門がどのように連携しているのか、キーマン同士のつながりはどうなっているのかといった情報を、リストに付随する形で記録・整理することで、より立体的な“地図”が完成します。

このように、役職者リストは「個人」を起点としつつも、企業という組織体を構造的に把握するためのツールとして設計・運用することで、はじめて“資産”としての意味を持つようになります。

異動・退職が生む“関係性資産”の積み上げ

役職者リストは、時間の経過とともに陳腐化していくものと考えられがちです。異動や退職によって情報が古くなり、「使えないリスト」として扱われるようになる――このようなイメージは、多くの現場に共通しています。

しかし、異動や退職そのものを“価値が失われる要因”と捉えるのは、リストの可能性を狭める見方です。むしろ、こうした人の動きをきっかけとして、新たな関係性が生まれ、リストはより厚みを増していくことができます。

たとえば、ある企業で接点を持った役職者が異動した場合、その人物は新たな立場で引き続き関係を築ける対象になります。仮に転職した場合でも、以前の関係性が別の企業との新たな接点へとつながることは珍しくありません。リストは「その瞬間に取れる行動先」を示すことはもちろん、「過去の接点を起点に、新たな関係性を広げるための資産」としても活用できます。

また、後任者や新たなキーマンが登場することで、企業内の人脈マップが更新され、リストの価値は積み上がっていきます。一度築いた関係性や過去のやり取りを、リストを通じて可視化し、次の担当者にスムーズに引き継ぐことで、単なる情報更新では得られない“関係性の蓄積”が生まれます。

ここで重要なのは、役職者リストを「今使うための名簿」として消費するだけではなく、企業ごとの関係性を積み重ねていく“アーカイブ”としても捉えることです。人の移動は避けられないものであり、それに伴ってリストが“古くなる”のではなく、“広がりを持つ”という発想の転換が、リストを資産として活かすための鍵となります。

異動や退職によって動き続ける人脈情報を、関係性資産として蓄積し続けること。これが、役職者リストを“陳腐化するデータ”から“価値を積み上げ続ける資産”へと変える視点です。

リスト資産化のための“意図的な運用”

役職者リストを資産として活用するには、「とりあえず名簿を作っておく」という受動的な姿勢から一歩踏み出し、意図を持って積み上げる運用が欠かせません。リストは、作成した時点で価値が完成するものではなく、どのような視点で整備し、どんな目的で蓄積していくかによって、その後の営業活動に与える影響が大きく変わります。

多くの企業では、リストは「集客や営業のために、必要になったときに作るもの」と捉えられがちです。もちろん、こうした場面ごとのリスト整備は重要です。しかし、それだけでは一時的な効果にとどまり、長期的な資産としての価値を生み出すには至りません。

そこで求められるのが、「誰を、どの層で、どのように積み上げていくか」という設計の視点です。たとえば、決裁層のリストを重点的に整備するのか、影響力を持つ部門責任者を広く網羅するのかといった方針を明確にすることで、リストは単なる連絡先の集まりではなく、企業との関係構造を可視化するための戦略的なツールとなります。

また、リストを蓄積していく過程では、情報を“取捨選択する基準”を持つことも重要です。名刺交換や商談で得た情報をすべて機械的に追加するのではなく、自社にとっての影響度や関係性の深さを踏まえ、意図的に取捨選択しながら積み上げていくことで、リストの質は自然と高まります。

さらに、リストを“今使うため”だけでなく、“将来的な資産”として運用するには、フィルタリングやセグメンテーションといった視点も欠かせません。たとえば、「過去に接点があったが現在は休眠している役職者」「同一企業内で複数の部署に影響を与えるキーマン」など、自社にとって有効な切り口で分類・整理することで、状況に応じた戦略的な活用が可能になります。

重要なのは、これらの運用が特別なツールや複雑な仕組みを必要とするものではないという点です。役職者リストを“今”に役立てながら、“将来の資産”として意識的に積み上げていく。この地道な運用こそが、リストを本当の意味で“戦略的な資産”に育てるための鍵になります。

まとめ

役職者リストは、営業活動において「今すぐアプローチするための名簿」として使われることが一般的です。しかし、それだけにとどまらず、企業との関係性を可視化し、中長期で活用できる“資産”としての可能性を持っています。

ポイントは、単に名簿として作成・消費するのではなく、「どの層を、どのように積み上げていくか」という設計の視点を持つことです。企業の組織構造を捉え、異動や退職によって広がる関係性を資産として積み重ねていくことで、リストは継続的に価値を発揮する存在になります。

また、リストの運用においては、情報を取捨選択し、必要な切り口で整理・分類する意識が重要です。これにより、場面に応じた適切な活用が可能となり、単なる連絡先一覧ではない、戦略的な営業基盤として機能させることができます。

リストを“使い切るもの”と考えるのではなく、“積み上げていく資産”として捉える。この視点こそが、役職者リストを長期的に価値あるものに育て、営業活動の可能性を広げる鍵となります

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