2025-06-03

送るだけで終わらせない郵便DM ― 営業が動きやすくなる設計とは

BtoB 営業・マーケティング コラム

デジタル施策が主流となった今でも、郵便DMには独自の強みがあります。ただし、その活用が営業部門にとって「やりやすいもの」になっているかどうかは、また別の話です。

送付先の選定に手間がかかる、送るタイミングが現場とずれている、届いたあとに話題として使いにくい――こうした“扱いづらさ”が重なると、どれだけ工夫されたDMでも営業現場では活かされなくなってしまいます。

本記事では、「送付対象の設計」「送付の実務」「送付後の話題化」という三つの観点から、郵便DMの“扱いやすさ”をどう設計するかを考えます。制作や企画の立場からDMを設計する際に、現場の感覚とどう向き合うべきかを整理していきます。

営業の動きに合わせて“送れる”DM設計とは

郵便DMの成果を左右する大きな要素のひとつは、「誰に、いつ送るか」の設計です。どれほど内容が工夫されていても、送る相手やタイミングが営業の動きと合っていなければ、その情報は流されて終わってしまう可能性があります。

営業にとって“使いやすいDM”とは、単に良い資料であるというだけではなく、自分の活動と噛み合っているDMです。たとえば、接点が途切れかけていた見込み先に、商談の余地があるタイミングでDMが届けば、それだけで会話のきっかけになることがあります。一方で、すでに話が終わった相手に、タイムラグのある一斉送付でDMが届いてしまえば、かえって不自然な印象を与えることもあります。

このようなズレを防ぐためには、送付対象と送付タイミングの設計が営業の状況と連動していることが欠かせません。送る相手を事前に営業部門が指定できるのか、それともマーケティング側が営業の動向を踏まえて選定しているのか。いずれにしても、現場の視点が送付計画に反映されていなければ、営業の中で“使われるDM”にはなりにくいのが現実です。

加えて、送付を一斉に行う場合であっても、誰に対して・どのような狙いで送っているかが営業に共有されていることは重要です。どの業種に送ったのか、どの役職層に向けた内容なのかといった情報があれば、送付後のフォローアクションも具体的に考えやすくなります。逆に、送ったことを知らされないままでは、営業がDMを活用する機会も生まれません。

郵便DMの効果は、内容やデザインだけで決まるものではありません。営業活動の流れに合わせて、誰に・いつ届けるのか。その設計が噛み合っているかどうかが、DMの“使われ方”を大きく左右します。

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「送る」のが負担にならない設計とは

郵便DMの送付は、営業部門の関与の度合いによって“やりやすさ”が大きく変わります。ただ「送るだけ」のように見えても、その過程には複数のハードルが潜んでいます。特に、送付対象の選定やリストの取り扱いが煩雑になると、それだけで施策全体の稼働率が落ちてしまいます。

営業がDMを送りやすいと感じる設計には、いくつかの特徴があります。そのひとつが、「宛先の指定が面倒でないこと」です。たとえば、対象リストがCRM上にすでにある状態で、該当者にチェックを入れるだけで送付依頼が完了するような仕組みであれば、営業は最小限の工数で動けます。反対に、手元の名刺やエクセルを都度まとめて渡すような形式では、タイミングを逸したり、そもそも手が回らなくなったりすることもあります。

また、DMの発送単位も「営業の感覚」に沿っていることが重要です。ある程度まとまった件数で一斉送付するパターンもあれば、少数の見込み先に都度送りたいケースもあります。このとき、「10通未満では送れない」「毎週金曜までに依頼しないと翌週扱いになる」などの制約があると、営業の動きとズレが生じ、使われなくなっていく原因になります。

さらに、文面のカスタマイズや同梱物の変更がどこまで可能か、という点も運用負担を左右します。すべての営業が自由に内容を変えられる状態はリスクもありますが、相手やタイミングに応じた微調整を加えられる柔軟性は、「送りたい」と思える理由になります。

こうした要素を考えると、郵便DMの送付設計は、営業現場の実態に合わせて「どこまでを仕組み化し、どこに裁量を残すか」のバランスが問われます。送りたい相手に、送りたいときに、余計な作業なく送れる体制。これが整っているかどうかが、営業から見た“扱いやすさ”を大きく左右します。

話題になるDMには“持ち出しやすさ”がある

郵便DMは、単に届けるだけで完結するものではありません。その後の営業活動で「話の糸口」にできるかどうかによって、活用の価値が大きく変わります。実際には、DMの内容そのものよりも、「営業がその話を切り出しやすいかどうか」が問われています。

たとえば、ある見込み先に対して接触のきっかけを探っているとき、営業が「このDM、届いていますでしょうか」と自然に話を振れるかどうか。それができれば、相手の反応に合わせて話題を広げることができます。一方で、DMの内容が話しにくかったり、営業自身が“紹介しにくい”と感じたりする場合、そのまま触れずに終わってしまうことも珍しくありません。

こうした“持ち出しやすさ”を左右するのは、情報量や文言の正確さではなく、営業が「話題にしやすい」と感じるかどうかです。たとえば、資料のように細かい説明が必要な構成ではなく、ひとつの問いかけや課題提起で構成されているDMであれば、「そういえば、あの内容どう思われましたか」と自然に会話を始めることができます。

視覚的な印象もまた重要な要素です。文字ばかりで情報が詰め込まれているより、レイアウトに余白があり、ポイントが視覚的に整理されていれば、営業としても「どこを取り上げるか」が明確になり、会話に持ち込みやすくなります。逆に、情報が多すぎたり専門性が先行しすぎていると、話題にするまでの心理的ハードルが上がってしまいます。

さらに言えば、「誰に向けたDMなのか」が明確になっていることも大切です。対象が絞られていればいるほど、営業側は“該当している人にだけ言及できる”安心感を持って話を切り出せます。広く浅い内容よりも、狭く深く伝えられるDMのほうが、結果的に会話の導入として効果を発揮しやすいのです。

郵便DMは、相手に何を伝えるかだけでなく、営業がどう活用するかという視点で設計されているかが問われます。持ち出しやすさのあるDMは、結果的に「使われるDM」になります。営業にとって会話の入り口として自然に扱えるかどうか――そこに意識が向いているかどうかが、DM施策の質を左右します。

郵便DMの“扱いやすさ”を設計する視点

郵便DMの成果を高めるには、内容や見た目の工夫だけでなく、「現場でどう扱われるか」を設計段階で具体的に想像する必要があります。営業が日々の業務の中で無理なく関われるかどうか。そこに配慮のないDM施策は、どれほど意図が良くても現場では使われなくなっていきます。

多くの場合、DMの制作はマーケティング部門や企画側が主導します。しかし、DMが届けられたあとの活用場面は、営業の手の中にあります。この分業構造がある限り、“制作と運用の距離”をどう埋めるかが問われ続けます。

たとえば、送付先の指定が営業にとって手間でないか。送ったあとのフォローがしやすいか。話題にできる設計になっているか。こうした要素は、制作物そのものの中身ではなく、「どう扱われるか」の視点で見ないと見えてこないものです。

また、DMの使いづらさがどこにあるのかは、実際に現場の動きを想像しなければ掴めません。意図したタイミングで届かなかった、話すきっかけとして使いづらかった、対象がずれていた。そうした“細かな違和感”が積み重なると、現場はDMそのものを敬遠するようになります。

このような状況を防ぐには、最初から「営業がどう扱うか」という視点で設計に入る必要があります。言い換えれば、“伝えたいこと”からではなく、“使われる場面”から逆算して設計するという発想です。誰に、どのタイミングで、どう届けて、どんな導線で話題にするのか。それが最初に描かれていなければ、DMは単なる紙面で終わってしまいます。

郵便DMの設計には、制作物としての完成度だけでなく、実際にどのように使われるかという運用面の視点が欠かせません。扱いやすさは、見た目やレイアウトといった表層的な要素だけではなく、使う場面をどう想定しているかによっても左右されます。現場での活用を想定した設計であればこそ、DMは営業の中に自然と組み込まれていきます。

まとめ ― 郵便DMが“使われる”ための三要素

郵便DMを営業現場で“使われるツール”として成立させるには、見た目や内容の工夫だけではなく、運用全体の中で無理なく扱える設計になっていることが欠かせません。本記事では、「送付対象の設計」「送付の実務」「送付後の話題化」という三つの観点から、その“扱いやすさ”を考えてきました。

まず、誰に・いつ送るかの設計が、営業活動のリズムや優先度と合っているかどうか。次に、宛名指定や送付依頼が営業にとって手間なくできる運用設計になっているか。そして、届いたDMを起点に自然に会話が生まれる構成になっているか――この三つが連動してこそ、DMは現場の中で活用されるようになります。

営業部門にとって「扱いやすいDM」とは、使うための準備や説明に余計な労力がかからず、自分の仕事の流れの中で自然に扱えるDMです。そのためには、制作や企画の段階から「誰がどんな場面で使うのか」を想定し、運用まで含めた設計に落とし込むことが求められます。

郵便DMが“使われる”かどうかは、完成したあとではなく、設計の初期段階でほぼ決まっています。送付対象の設計、実務上の扱いやすさ、話題にしやすい構成――この三要素を意識することが、営業にとって本当に役立つDM施策につながります。

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