2025-07-24
数より“相手”を見極める営業へ ― 部長リスト活用の考え方と実務
BtoB 営業・マーケティング コラム
営業活動の成果を大きく左右するのは、「どれだけ多くの人に声をかけたか」ではなく、「誰に用があるか」を見極めて動けるかどうかです。かつてはリストの“数”を増やし、ひたすら多くの企業や担当者にアプローチすることが主流でしたが、今はそのやり方だけでは通用しづらい時代になりました。
限られた時間とリソースのなかで、成果につながる相手を正確に選び出すことがますます求められています。そのための具体的な手段として注目されているのが「部長リスト」です。狙うべき相手を明確にし、効率的かつ効果的に動くためには何が必要なのか。本記事では、「誰に用があるか」を起点に営業活動を見直し、部長リストを使ったアプローチの考え方を掘り下げます。
営業成果を左右する“相手選び”の本質
営業活動で「どんな相手と話すか」は、成果に直結する大きな要素です。実際、「まずは数をこなさなければ始まらない」という考え方には一定の説得力がありますし、多くの企業や担当者に接触すること自体が営業現場の基本でもあります。
ただ、その“数”をこなすことが目的化してしまうと、本来得たい成果から遠ざかってしまうのも事実です。たくさん声をかければ、誰かは話を聞いてくれるだろう、という発想は一見合理的に見えますが、実際には「今、本当に用がある相手」に行き着くまでに多くの労力や時間を消耗してしまいがちです。しかも、その多くが成果に直結しないまま終わることも少なくありません。
ここで立ち止まって考えたいのは、「数をこなす」ことそのものに疑問を持つ、というよりも、「どうすれば自分たちの提案が本当に響く相手を見極められるのか」という視点です。営業成果を求めるうえで重要なのは、やみくもにリストを広げることではなく、「どの層に狙いを絞ればいいのか」「誰に用があるのか」を見定めて動くことです。
効率化が求められる時代だからこそ、「数をこなす」の先にある“相手選び”の重要性を改めて意識する必要があります。相手を見極め、狙いを定めてアプローチする――その一歩が、営業成果を大きく左右することにつながります。

部長リストという“絞り込み”の具体的な意味
営業活動において「誰に用があるか」を考えるとき、自然と浮かび上がってくるのが“役職”という視点です。そのなかでも「部長クラス」に狙いを絞るという選択は、多くの企業にとって現実的かつ合理的な一手と言えます。
部長リストを作成し、部長クラスに的を絞ってアプローチすることには、いくつか明確なメリットがあります。
まず、部長は現場の動きを把握しつつ、一定の裁量や決定権を持つことが多いポジションです。現実には社長や役員クラスに直接アプローチできる機会は限られていますが、部長クラスであれば、現場感覚とマネジメントのバランスを持ち合わせていることが多く、提案や情報が“上にも下にも通りやすい”という特性があります。
また、部長クラスは業務上の課題やニーズを日々意識していることが多く、具体的な提案や打診に対しても現実的な判断を下しやすい立場です。
こうした意味で「部長リスト」は、単なる連絡先リストではなく、営業活動の“絞り込み”そのものを体現しています。部長というフィルターを通すことで、組織の中で本当に話が進みやすい相手、本質的な提案に応えてくれる相手にダイレクトにアプローチできる可能性が高まります。
もちろん、部長リストを作ること自体がゴールではありません。重要なのは、「なぜこの役職に狙いを定めるのか」を意識し、そのリストを使って効率的・効果的なコミュニケーションを図ることです。単なる“数稼ぎ”ではなく、“絞り込む”ことで、提案や情報提供の精度を上げることができる――これが、部長リストを活用する具体的な意味です。
リスト運用の実務と現場感覚
部長リストを作成した後、その活用の仕方によって営業成果は大きく変わります。リスト自体は「狙いを絞った営業活動」のスタート地点にすぎません。肝心なのは、リストをどう現場で使いこなすか、そして実際のアプローチでどれだけ工夫を重ねられるかという点です。
実際の営業現場で、接点のない部長にアプローチする場合、手段は主に電話や郵便DMとなります。ただ順番にアプローチしていくだけでは十分な成果にはつながりません。たとえば、相手が置かれている状況や直面している課題、あるいは企業の事業環境や動向なども手がかりにしながら、「今どのようなテーマなら反応が得られそうか」「どんな切り口で話を持ちかけるのが適切か」といった観点を持つことが重要です。
郵便DMであれば、単なる案内やお知らせになってしまわないよう、相手にとって“意味のある情報”として伝わる工夫が不可欠です。メッセージの内容や構成、送り方一つで相手の受け止め方は大きく変わります。例えば、相手の部門が今どのような課題意識を持っていそうか、自社のどのような提案が役立つかを想定して、できる限り個別性を持たせることで、反応の確度が高まります。
電話の場合も同様に、最初の入り方や言葉の選び方ひとつで、その後の展開が変わります。相手の反応を見ながら、伝え方や話題の順番を臨機応変に調整することが、現場の営業担当者には求められます。話がうまく進まないと感じたときこそ、リストを見直したり、アプローチの工夫を重ねたりする柔軟な発想が大切です。
また、リストに頼りきってしまい、現場の状況や相手の空気感を無視してアプローチを続けてしまうと、せっかく作ったリストも十分に機能しなくなってしまいます。営業の現場では、一つのリストから同じ結果が出るとは限らず、担当者ごとに工夫や経験がものを言う場面が多いものです。リストは“成果の入り口”に過ぎず、そこから先は一件一件のアプローチにどれだけ丁寧さや工夫を込められるかが成果を分けます。
部長リストを活用するうえでは、現場感覚を持ち、相手の立場や状況を想像しながら、自分なりの工夫を重ねていく姿勢が不可欠です。狙いを絞ったリスト運用と、現場ごとのきめ細かい対応が組み合わさることで、営業活動の質と成果は着実に高まっていきます。
まとめ
営業活動の成果は、「どれだけ多くの人にアプローチしたか」ではなく、「誰に用があるか」を見極めて動けるかどうかで大きく変わります。そのための具体的な一歩として有効なのが、部長リストによるターゲットの絞り込みです。
部長クラスを中心としたリストを整えることで、組織の中で現実的な決定権や影響力を持つ相手に効率よくアプローチできるようになります。これは、単なる効率化のためだけでなく、営業活動そのものの質を高め、より意味のある対話や提案を生み出すための基盤となります。
実際に成果をあげるためには、リストの作成だけで満足せず、現場で一件一件のアプローチに工夫を重ねていくことが不可欠です。部長リストは、狙いを絞った営業活動のスタート地点であり、そこから先の動き方によって得られる結果も大きく変わります。
営業の効率化が求められる今こそ、「誰に用があるか」を意識し、部長リストを活用した狙いの定まったアプローチを実践する。その積み重ねが、確かな成果へとつながっていきます。
