2025-07-23

ティール組織 ― ヒエラルキーに頼らない組織運営

BtoB 営業・マーケティング コラム

「ティール組織」は、従来のヒエラルキー型とは異なり、メンバー一人ひとりが自律的に関わる新しい組織モデルとして提案されています。指示や管理を前提としない組織運営のあり方が、多様化するビジネス環境の中でひとつの選択肢となりつつあります。

本記事では、ティール組織の考え方や登場の背景、主な特徴、組織にもたらす変化について解説します。また、導入を検討する際の課題や、考え方を部分的に取り入れるヒントについても整理し、今後の組織づくりを考えるための視点をお伝えします。

ティール組織とは何か

ティール組織は、従来のヒエラルキー型組織や管理重視の運営スタイルとは異なる、新しい組織モデルとして提案されています。その特徴は、組織の中で働く一人ひとりが自律的に考え、行動し、全体の目的に向かって協働する点にあります。

この「ティール」という言葉は、組織の発達段階を色で表現する理論に基づいています。フレデリック・ラルーによる書籍『Reinventing Organizations』では、組織の進化をレッド、アンバー、オレンジ、グリーン、そしてティールといった色で分類しています。それぞれの色は組織の価値観や運営スタイルの違いを表しており、ティールはその中でも最も進化した段階とされています。

ティール組織の特徴は、主に三つの柱で語られます。ひとつは「セルフマネジメント(自主経営)」、つまりトップダウンの指示に頼らず、現場のメンバー同士が必要な意思決定を行い、責任を持って組織運営に関わる仕組みです。ふたつ目は「ホールネス(全体性)」と呼ばれ、メンバーが職場の中で自分らしさや多面性を発揮できることを重視します。そして三つ目は「エボリューショナリー・パーパス(進化する目的)」であり、組織が硬直した目標や計画ではなく、外部環境や内面的な変化に合わせて柔軟に進化し続けることを目指します。

ティール組織は、役割や肩書に縛られることなく、多様な価値観や専門性を持った人材が協働しやすい環境をつくり出すことを意図しています。そのため、従来型の組織運営とは異なるルールや価値観を取り入れている点が特徴です。

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ティール組織が注目される背景

ビジネス環境の変化が加速する中、多様化や不確実性がこれまで以上に組織運営に影響を与えています。市場のニーズは複雑化し、技術革新もスピードを増す中で、従来のトップダウン型の管理だけでは柔軟に対応しきれない場面が増えてきました。このような背景から、「個人の自律性」や「現場での即応性」を重視した新しい組織のあり方への関心が高まっています。

従来のヒエラルキー型組織は、指示や計画に基づいて一方向的に物事を進めるスタイルが中心でした。しかし、環境が大きく変わる時代には、現場で素早く意思決定できる柔軟な組織構造が求められます。自律性を備えた組織は、状況に応じて最適な動きをとりやすく、従業員一人ひとりの主体性や多様な視点も活かしやすいという特長があります。

また、組織の成長や維持のためには、単なる効率化だけでなく、イノベーションを生み出すための風土づくりも欠かせません。上下関係の枠を超えて意見やアイデアが出やすい組織は、変化への適応力が高く、新しい価値を生み出すきっかけにもつながります。

こうした状況を背景に、「全員が同じ方向を見て主体的に動ける組織」を目指す考え方として、ティール組織のモデルが注目されるようになりました。ティール組織は、管理や統制を最小限にとどめ、メンバーが自律的に意思決定を行い、それぞれの強みを活かすことを重視しています。

時代の変化に対応し、組織の柔軟性と創造性を高めるための新たな選択肢として、こうした考え方が支持を集めているのです。

ティール組織の三つの特徴

ティール組織は、従来の組織とは異なる三つの特徴によって成り立っています。それぞれの特徴が、実際の働き方や組織運営の中で具体的にどのような変化をもたらすのかを見ていきます。

セルフマネジメント(自主経営)

ティール組織の第一の特徴は「セルフマネジメント(自主経営)」です。これは、従来のようなトップダウンの管理や指示に頼らず、組織のメンバー全員が自分の判断で業務を進めるという発想です。権限や意思決定が特定の役職に集中するのではなく、現場でその場にふさわしい判断ができる仕組みが整えられます。

この特徴が導入されることで、メンバー一人ひとりが自らの役割や責任を意識しながら、自律的に行動できるようになります。日常の業務においては、「上からの指示を待つ」のではなく、「自分で考え、必要があれば周囲と相談しながら動く」というスタイルが主流になります。

こうした環境では、現場で起きている課題やチャンスに即座に対応できる柔軟さが生まれ、組織全体のスピード感や適応力が高まります。また、業務の進め方についても、自分なりに工夫しやすくなり、メンバー同士の協働もより活発になります。

ホールネス(全体性)

第二の特徴は「ホールネス(全体性)」です。これは、組織の中で各メンバーが「仕事の自分」と「プライベートの自分」を切り分けるのではなく、多面的な個性や価値観を持つ“ひとりの人間”として尊重されることを意味します。

この特徴が組織に根付くことで、職場のコミュニケーションはよりオープンになり、多様な意見や感情が共有されやすくなります。たとえば、業務に直接関係のない経験や考えも大切にされるため、お互いの背景や思いを理解し合う文化が生まれます。

このような環境では、心理的な安全性が高まり、メンバーは自分の考えや提案を率直に表現しやすくなります。その結果、相互理解が深まり、信頼関係の強い組織が育まれます。新しい発想や課題解決のアイデアも、自然と出やすい土壌がつくられていきます。

エボリューショナリー・パーパス(進化する目的)

第三の特徴は「エボリューショナリー・パーパス(進化する目的)」です。ティール組織では、明確な目標をあらかじめ決めてその達成だけを目指すのではなく、組織そのものが時代や社会の変化、あるいは内面的な成長に合わせて、柔軟に目的を見直し続けるという考え方を重視します。

この特徴によって、組織の方針や活動内容も、状況や外部環境に応じて自然と変化していくことが当たり前になります。全員が「なぜこの仕事をしているのか」「今、組織はどんな価値を社会に提供すべきか」といった問いを持ち続けることで、変化への適応力や新しい価値創造の意識が高まります。

また、固定的な目標に縛られないことで、長期的な視点や組織の存在意義を見つめ直すきっかけにもなります。メンバー自身が組織の「進化」に主体的に関わっていく感覚を持てることも、ティール組織ならではの変化の一つです。

ティール組織の課題と実践のヒント

ティール組織の考え方には多くの魅力がある一方で、実際の組織運営に取り入れる際にはさまざまな課題も伴います。従来の組織文化や仕組みと大きく異なるため、理論通りに進まない場面も少なくありません。ここでは、主な課題とともに、実践のヒントについて整理します。

主な課題

まず挙げられるのは、従来型の組織文化や慣習とのギャップです。指示や管理が前提となっている職場では、セルフマネジメントをいきなり実践しようとしても、メンバー自身が迷いや戸惑いを感じやすくなります。役職や肩書に基づいた意思決定が当たり前になっている環境では、権限の分散や現場での判断を定着させるには時間がかかる場合があります。

また、管理職やリーダー層の役割も大きく変わります。従来は指示・監督が主な役割だった管理職が、ティール組織では「支援者」や「調整役」としてメンバーの自律を後押しする役割に変化します。この切り替えには、本人だけでなく組織全体の意識改革が求められます。

さらに、全員の価値観や考え方をすり合わせるプロセスも不可欠です。ホールネスの考え方が浸透するためには、多様な個性や意見を受け入れる土壌が必要であり、時には摩擦や行き違いが生じることもあります。エボリューショナリー・パーパスを実感として持つには、「何のために働くのか」「組織の存在意義は何か」といった問いをメンバー全員が日々考え続けることが不可欠ですが、その習慣が定着するまでには時間がかかることも少なくありません。

実践のヒント

ティール組織の考え方を取り入れる際は、「すぐに完璧な形を目指す」よりも、自分たちの組織に合ったやり方を少しずつ探っていくことが現実的です。

たとえば、まずは日々のミーティングやプロジェクト単位でセルフマネジメントを実践するところから始めるといった、部分的な導入が有効です。役割分担や意思決定の方法を段階的に見直し、実際にメンバーが自律的に動ける仕組みを少しずつ増やしていくことで、無理なく移行できます。

また、ホールネスを意識する場面としては、日常的な対話やフィードバックの中でメンバーの多様な視点や気持ちを尊重することが挙げられます。全員が意見を出しやすい環境を整えたり、相互の価値観を共有するワークショップを設けるのも効果的です。

エボリューショナリー・パーパスについては、「今、組織として何を大事にしたいのか」を定期的に見直す機会をつくることがポイントです。具体的なゴールを定めるのではなく、状況に応じて目的や方向性を柔軟に見直しながら、みんなで考えていくプロセスを大切にします。

大切なのは、ティール組織の理想像を一度に実現しようとせず、自分たちの現状や組織文化をふまえて、できるところから取り入れていく姿勢です。少しずつ変化を重ねることで、自然と自律性や全体性が根付いていく道筋をつくることができます。

まとめ

ティール組織は、従来のヒエラルキー型とは異なり、一人ひとりの自律性や多様な価値観、そして組織そのものが進化し続けることを大切にする新しい組織モデルです。セルフマネジメント、ホールネス、エボリューショナリー・パーパスという三つの特徴が、働く人と組織の関係性や日々の仕事のあり方に新しい視点をもたらします。

一方で、実際の導入や運営にあたっては、従来の組織文化とのギャップや価値観のすり合わせ、役割の変化など、さまざまな課題が生じることも少なくありません。だからこそ、理想像を急いで実現しようとするのではなく、自分たちの現状や組織の特徴に合った形で、少しずつ変化を積み重ねていく姿勢が重要です。

ティール組織の考え方には、組織の在り方や働き方を根本から問い直し、これからの時代にふさわしい運営を考えるヒントが詰まっています。全員が主体的に関わり合い、それぞれの強みや個性を活かせる環境づくりを目指すなかで、ティール組織という視点が参考になる場面も増えていくでしょう。

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